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- 国・地域名:
- EU
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 研究・イノベーション総局
- 元記事公開日:
- 2015/02/02
- 抄訳記事公開日:
- 2015/03/05
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グライコミクスの進展:糖鎖分析のための新手法を開発
- 本文:
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欧州委員会(研究・イノベーション総局)は、2015年2月2日に標題の記事を発表した。以下にその概要を紹介する。
=====糖タンパク質のような複合糖質は、人間の健康に関わりのある多くの細胞内プロセスや細胞間相互作用において役割を担っている。また、複合糖質は様々な疾患も内包しているため、大規模に手早く正確に分析することができれば、新しい治療法の開発につながる可能性がある。EU助成のHighGlycanプロジェクトにおいて、研究者たちはこの方法を見つけ出した。
ハイスループット技術(科学者たちが大量の反復作業を迅速かつ正確に行うことを可能にする技術)は、これまで生物医学研究の多くの分野の進展に貢献してきたものの、細胞や組織内の糖鎖構造を研究対象とする研究分野であるグライコミクスにおいては、この方法ではうまくいかなかった。なぜなら、複合糖質は非常に種類が多いため、複雑すぎてしまうからだ。
HighGlycanプロジェクトは、この難題に立ち向かった。2016年10月にプロジェクトが終了するまであと2年間が残っているが、ハイスループット処理による血液などの臨床標本内の多糖類を測定する方法をすでに開発し、生物医学研究で幅広く利用可能な技術を生み出した。
本プロジェクトは、糖類がタンパク質などの他の生体分子と結びつき、別の役割を持つ様々な糖鎖構造を形成するプロセスである”グリコシル化”に焦点を当てている。グリコシル化は、健康・疾患の様々な側面を反映する。例えば、癌は、特定の糖鎖の変化を付随していることが明らかになっている。健康な人と疾病を持つ人のサンプルから、これらの構造を比較することによって、特定の疾患の指標となる違いを発見すれば、新しい診断法の開発に役立つ可能性がある。
本プロジェクトは、すでに実用化されている有望な技術を候補に挙げ、糖鎖分析に適用する方法を発見し、サンプルの準備方法に関するガイダンスを発表した。本プロジェクト・コーディネーターによれば、数百・数千のサンプルはこの方法で分析処理が可能であり、幅広い研究業界の人々はこのガイダンスを無料で利用することができる。プロジェクト・パートナーも、この成果に基づき、このような分析を支援する様々な種類のサンプル作製キットを開発中であり、そのうちいくつかはすでに製薬業界で利用されている。
<プロジェクト詳細>
・ プロジェクト名:HIGHGLYCAN
・ 参加国:オランダ(コーディネーター)、英国、ドイツ、アイルランド、クロアチア、スロベニア、フランス
・ 総事業費:799万9,296ユーロ
・ EU助成額:599万8,972ユーロ
・ 期間:2011年11月〜2016年10月 [DW編集局]