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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国民教育・高等教育・研究省(MENESR)
- 元記事公開日:
- 2015/03/05
- 抄訳記事公開日:
- 2015/03/13
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国の研究戦略「France Europe 2020」
- 本文:
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国民教育・高等教育・研究省は、2013年7月22日の「高等教育・研究法」でその策定が定めれている国の研究戦略(SNR)をこのほど(2015年3月5日)公表した。
科学界、大学界の尽力によるもので、5つの全国研究連盟(生命科学・医療分野のAviesan、エネルギー分野のAncre等)、国立科学研究センター(CNRS)、社会・経済界の関係者、競争力拠点(pôles de compétitivité)、各種団体の代表、政府、公共機関、関係地方自治体、市民(公開討論において)など幅広いコミュニティが協議に関与している。
協議の進捗や明確になった優先課題は、各段階ごとに研究戦略会議(2013年12月に首相が設置)に提出された。研究戦略会議は科学界および社会・経済界のハイレベル委員26名で構成され、上記の広範な協議による提案の一部について補完的または代替となる検討結果をまとめ、政府に対してSNRの効果の評価要件を提示した。
今回公表された国家研究戦略(SNR)「France Europe 2020」は、上記作業の結果であり、研究戦略会議の提言を踏まえたものである。本SNRでは、EUの研究・イノベーションに関する新規プログラム「Horizon 2020」と一貫性をもって特定される10項目の社会的課題に対処するためのフランスの重点的研究方針を定め、その重点的研究方針の先にあって統括された施策を必要とする5つのテーマ別課題に関する行動計画を策定している。各省庁全体の連携により、SNRと科学研究の大方針に影響のある他の国家戦略(国家医療戦略、国家エネルギー研究戦略、国家持続可能開発戦略)や産業開発に影響のある他の国家戦略(フランス新産業計画など)との連係は確保されている。
「高等教育・研究に関する法」では、国家研究戦略の5年ごとの総括および改定を謳っている。
[10項目の社会的課題]
本戦略で定めている10項目の社会的課題に対する研究方針の概要は次のとおり。
1) 省資源管理と気候変動への適応
地球系のモニタリング、天然資源の持続可能管理、気候・環境リスクの評価と抑制、環境・バイオ技術など。
2) クリーンで安全で効率のよいエネルギー
エネルギー・システムの動的管理、エネルギー効率、戦略的資材への依存度低減、エネルギーや化学に使用する化石系炭素化合物の代替品など。
3) 産業再生
工場の電子情報化、人を中心とした柔軟な製造工程、新材料の設計、センサーと機器など。
4) 医療と福祉
生命体の多様性と進化に関するマルチスケール解析、生物学的データの処理・収集、研究と治療のための中核研究拠点全国ネットワークなど。
5) 食糧安全保障と人口問題
健康的で持続可能な栄養摂取、生産システム統合化のアプローチ、バイオマスの生産から利用の多様化まで、など。
6) 持続可能な輸送と都市システム
都市観測施設の展開、新たな移動手段の考案、持続可能な都市に役立つ手段・技術、都市の基盤構造・ネットワークの統合と復元など。
7) 情報・通信社会
第5世代ネットワーク基盤構造、モノのインターネット、大量データの活用、マン・マシン協働など。
8) 革新型、統合型、適応型社会
イノベーション能力の新たな指標、データの利用可能性と知識の抽出、社会的・教育的・文化的イノベーションなど。
9) 欧州にとっての宇宙利用の目標
地球観測における一連のサービス、データ通信・ナビゲーション分野の競争力、重要部品、大宇宙の観測・探査技術、国防と国土安全保障など。
10)欧州、欧州市民、欧州居住者の自由と安全保障
リスクや脅威の防止・予測、危機管理の統合的アプローチ、セキュリティ・システムの回復力など。[5項目の行動計画]
本戦略で策定したテーマ別5項目の行動計画の概要は次のとおり。
1) ビッグデータ
構造化されていない大量データの解析による包括的解決策に関する研究の支援など、4項目の施策が示されている。
2) 地球系: 観測、予測、適応
観測基盤構造および関連データ処理に関する画期的技術の創造・開発など、3項目の施策が示されている。
3) システム生物学と応用
システム生物学に関する科学コミュニティの組織化および同分野の研究者育成の促進など、3項目の施策が示されている。
4) 研究室から患者へ
社会や産業界向けに迅速な技術移転の可能性が高いプロジェクト支援により、医療のイノベーションを促進するとしている。
5) 人類と文化
プロジェクトを受け入れる多分野共通基盤の支援など、4項目の施策が示されている。 [DW編集局+JSTパリ事務所]