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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 全国技術研究協会(ANRT)
- 元記事公開日:
- 2015/05/20
- 抄訳記事公開日:
- 2015/06/18
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研究費税額控除(CIR)の目的と効果に関するメモ
- 本文:
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全国技術研究協会(ANRT)は2015年5月20日付け標記文書を公表した。その概要を以下に記す。
[CIRは基本的に税制上の優遇措置ではなく、目標とするレベルに戻す措置である]
ANRTの見解では、CIRは競合する外国主要企業より大きな税負担を負うフランス企業の不利な条件を埋め合わせる手段の1つである。フランス政府の政策は高い税負担と合わせた差別的減免措置を狙ったものであり、したがって税負担を抑制する緩和政策というより、むしろ国家による一種の介入政策である。基本的にはCIRは、フランス特有の現状に対処して、フランス企業の税負担をその国際的競合相手のレベルに近づける手段であり、しかもそれを各企業の研究開発活動の規模に応じて実施するものである。
ANRTは毎年、各国における研究者のコスト比較を発表しているが、これによるとCIRによってフランスの研究者コストはOECDの平均に引き戻されている。さらに言えば、CIRは質の高い人材を雇用する活動を促進することで、競争力・雇用税額控除(CICE)を達成している。
上記税負担の差別的引き下げ措置は、欧州のいわゆる「リスボン・バルセロナ」目標の一環で実施されている。この目標では研究開発支出を国内総生産の3%以上にすることになっており、公的ファンディングによって1%を確保し、残りを企業が確保することになっている。フランスでは公的ファンディングによる1%は達成されており、企業の研究開発支出の側での努力が期待されている。
[脱工業化にも係わらず、民間研究開発は伸びている]
企業の研究開発支出がそれほど伸びていないことを意外に思う人もいる。全般的には産業界が研究開発支出の約80%を確保しているが、残念ながら2000年以降フランスでは脱工業化の傾向が止まっていない。2001~2011年の10年間に、付加価値をもたらす支出である研究開発の集約度は2001年から2007年にかけて低下し始め、その後再度上昇している。統計的分析によると、この立ち直りは複数のセクターの活動の集約度が特に上昇したためと説明できる。その中で最も高い3セクターを挙げれば、情報・電子・光学製品、自動車産業、製薬産業である。このような集約度の上昇がなければ、脱工業化による低下を引きずっていたと思われる。
[CIRは大企業のフランス在留に役立っている]
脱工業化を経験した企業の研究開発集約度が上昇する中で、大企業のそれが60%を占め、企業の国内研究開発支出に対する大企業の寄与はここ数年はほとんど一定している。しかしフランスにも一定数の傑出した大企業がいて、それらは国際的企業である。複数の国で研究を実施しており、したがって自らの能力を特定の国から別の国に移行させる能力において中小企業に比べて優っている。CIRがある故に研究開発活動拠点をフランスに置くことを決定した大企業の例がある。
[大企業はエコシステムの要である]
大企業がいなければ、また大企業とそのサプライヤーの関係及び大企業と公的研究機関の関係がなければ、フランスの研究・イノベーション・システムの活動は減退する。
[DW編集局+JSTパリ事務所]