[本文]

国・地域名:
ロシア
元記事の言語:
英語
公開機関:
ロシア大統領府
元記事公開日:
2015/05/05
抄訳記事公開日:
2015/06/23

プーチン大統領とロスアトムCEOとの会談

Working meeting with Rosatom CEO Sergei Kiriyenko

本文:

ロシア大統領府の2015年5月5日付標記記事では、プーチン(Vladimir Putin)大統領とキリエンコ(Sergey Kirienko)ロシア国営公社「ロスアトム」CEOとの会談内容を伝えている。2014年のロスアトムの業績及びロシア国内外での原子力発電の展開状況について、キリエンコCEOによるプーチン大統領への報告の概要は以下のとおり。

・ロスアトムの2014年の業績

目標をすべて満たし、長期計画の約116%を達成した。発電は最も重点を置く領域であるが、1,820億KWhを発電し、計画よりも140億KWh超える記録的な年となった。全発電量に占める原子力発電の割合は15%から17%に上昇した。労働生産性は11.7%上昇し、給与は9.5%伸びた。平均給与は6万400ルーブルである。安全性に影響を及ぼす事故は1件もなかった。原子力発電所職員で構成される独立した国際組織が世界のすべての原子力発電所の記録をとっているが、ロシアの原子力発電所の信頼性は欧州や米国の約2倍である。

・ロシア国内外での原子力発電所の展開状況

ベロヤルスク及びロストフの原子力発電施設で各々1基の原子炉の試験運転を2014年11月に開始した。この試験運転開始に当たっては約20億ルーブルのコスト削減を行った。

国際展開については、外国からの受注ポートフォリオを拡大することを最重要目標に設定している。一昨年720億ドルを計画した際には980億ドルという達成目標を掲げたが、現在、1,014億ドル相当の受注を抱えている。これは、年に340億ドルの伸びがあったことを示している。(イランとの)”Bushehr”プロジェクトでは、政府間協定では8基、契約では4基を設置することが定められた。ハンガリーで2基の増設、クダンクラム(インド)でも2基増設された。今年は既にヨルダンと政府間協定を締結し、場所の選定を行った。

(2基増設の契約履行を強く主張するハンガリー政府に対し、EU側が同政府に拒否の姿勢を示したという事実を引き合いに出して、)競争力を維持し、政治的な圧力があった場合でもロシア側の提案が勝るものにするため、コスト問題は非常に重要である。これに関してロスアトムでは、毎年10%のコストを削減しようとする内部目標を設定した。この目標は、燃料製造、ウラン採掘、発電、廃棄物リサイクルといった重要要素をすべて網羅しての平均10%である。この1年でコストを15%から7%に削減することに成功した。ウラン1キログラム或いは生産される燃料1キログラムに対するコストは、平均10%減少している。

・人材養成

大統領の決定により設立された国家研究原子力大学は、ロスアトムの基盤をなしている。ロスアトムは(国内の)すべての大学と協働しているが、国家研究原子力大学・モスクワ工科物理研究所(Moscow Engineering Physics Institute: MEPhI)との関係が中心である(※)。MEPhIは全ての主要都市に分校を設置しているため、若年層が地元で修学できる点はロスアトムにとって重要である。各分校にはそれぞれ専門領域があり、核関連施設内の分校は軍事向けに、一般の諸都市にある分校は民生用分野に特化している。大学入学に際しては競争試験が行われるが、原子力発電所の運用管理者、製品技術者、工業技術者などの非常に難しい専門性を目指す若者の数が年々増加していることは意義あることである。

(※)「国家研究大学(National Research University)」とは、大学の研究ポテンシャルを高め、地方PhD学生のみならず外国の教授や学生を呼び込むために導入された10年間の期限付きで付与される制度。MEPhIは2008年に国家研究大学の1つに選定され、国家研究原子力大学(National Research Nuclear University)MEPhIと名称変更された。

・研究

(原子力分野における海外留学生・専門家の受け入れも積極的に行われている現状を指摘した上で、)引き続き科学分野においては活発な取組がなされているが、この分野の課題の一つとして、安全保障分野に積み残されてきた過去の遺産の処分がある。2014年は、任務を終えた原子力潜水艦を古い燃料と合わせて不活性化して処分するという非常に大きな仕事を遂行した。これらはソ連時代には特に極東地域に多く残っていたものである。昨年このプロジェクトが完了し、最後のバッチの廃棄燃料(補正燃料を含む)を除去した。

[DW編集局]