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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 国立科学財団(NSF)
- 元記事公開日:
- 2015/05/12
- 抄訳記事公開日:
- 2015/06/25
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サイバーフィジカルシステム(CPS: Cyber-physical systems)の新フロンティア、人体を研究
EXPLORING A NEW FRONTER OF CYBERPHYSICAL SYSTEMS: THE HUMAN BODY
- 本文:
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2015年5月12日付の国立科学財団(NSF)による発表記事の概要は以下のとおりである。
NSFはバーチュアル心臓モデル、ロボット-細胞ハイブリッドのプロジェクトを支援。
NSFは医学並びにサイバーフィジカルシステム(CPS)の分野における最先端技術を更に前進させるために、総額875万ドルに上る2つの5年間にわたるセンター規模の助成金を発表した。CPSは演算(computation)と物理的な構成部品の継ぎ目のない統合により構築され機能する人工システムで、しばしばインターネット・オブ・シングス(IoT)と称される。CPSは今日の埋め込み型システムを凌駕する能力を発揮すると期待される。
CPSはヘルスケアを含む私たちの社会の多くのセクターに利益をもたらす可能性を秘めている。合成生物学とロボット工学は革新的な新方法で人体の再生と維持を約束するが、CPSの進歩がどの様にこれらの技術を統合して健康転帰を改善するのかはよく知られていない。NSFの補助金を受けたこれらの新プロジェクトは、生物学及び医学の領域でのCPSの全く異なった活用法を研究する。NSFはCPSにおける研究支援では先駆者であり、それは健康、運輸、エネルギー及びインフラの各システムに洗練された賢さ(smart)を組み込む基礎を提供した。2つの新しい補助金はスマートヘルス(smart health)の可能性を追及する。1.「サイバー心臓(Cyberheart)」の開発。これは医療機器の開発と試験を、改善・加速する事につながる、バーチャルな患者個別のヒト心臓モデルと関連機器による治療のプラットフォームである。7つの大学・施設から構成される研究者は共同で、既存のものよりはるかに現実味を帯びた心臓及び機器モデルの作成に取り組む。サイバー心臓プラットフォームは既存の方法よりも迅速に、且つ低コストで医療機器の試験とバリデーションに活用でき、さらにサイバー心臓は安全で患者個別の医療機器による治療を設計する事を可能とする。埋め込み型心臓医療機器の斬新でバーチュアルな設計方法は医療機器の開発を促進し、より安全で効果的な機器や機器をベースにした治療法をもたらす。グループの手法は患者個別の心臓動態のコンピューターによるモデルを、それらのモデルが医療機器とどの様な相互作用をするかを分析する高度な数学的技術と組み合わせる。これらの分析方法は、動物やヒトでの試験が開始される前の機器の設計段階の早期において、機器の作動挙動の潜在的欠陥の検出に利用でき、又更に、医療機器を患者に埋め込む前の、医療現場における個々の患者ベースでの機器の設定条件の最適化にも活用できる。
チームはバーチュアルな機器のモデルを開発し、そしてこれはバーチュアルな心臓のモデルと一緒に結合して、コンピューターによる分析とシミュレーション技術に供する事が出来る完全なバーチュアル開発プラットフォームを実現する。更に彼らは、動物の心臓におけるバーチャルと実在の機器の行動を研究する実験主義者達と共に作業する。2. 生体細胞の設計におけるCPS。このプロジェクトは、将来組織並びに臓器再生に結びつく様な機能を果たす、マイクロロボットと合成細胞から成る集合体(team)を組み合わせる。コンピューター科学者、ロボット工学研究者並びに生物学者のチームはナノサイズのロボットの能力を、特別に設計された人工生命体と統合するシステムの開発に取り組む。このハイブリッド組み合わせの「バイオCPS(bio-CPS)」は極微細な組み立てから体内の細胞による感知(cell sensing)まで、従来不可能と考えられていた機能を果す様になる。総括研究者でボストン大学の機械工学兼システムエンジニアリング兼バイオインフォマティクス教授のカリン ベルタ氏は、合成生物学とミクロンサイズのロボット工学を合わせて、細菌類と哺乳類の細胞群において好ましい行動の出現を設計するこのプロジェクトは、組織工学から医薬品開発まで複数の応用領域に大きな影響を及ぼすと述べた。研究は合成生物学の新興領域における最近の躍進、とりわけ単純細胞に迅速に新能力を組み込む技術により駆られる。今まで研究者は単離された人工細胞の行動を制御したり調整する事は出来なかったが、外部から制御可能なマイクロロボットを導入すると変革を起こす事になるかも知れない
チームは共同で感知、輸送及び作業する能力を有するバイオCPSに重点的に取り組む。発想の実証として、チームは複雑な疑似織物の表面を構築する事が出来る人工細胞・マイクロロボットの複数の集合体を開発する。国土安全保障省、運輸省、米国航空宇宙局、食品医薬品局並びに国立衛生研究所を含む複数の連邦政府機関と密接に作業しながら、NSFはCPS研究が複合的な応用領域を横断して前進するのを支援し実用化への移行を加速する。2つの新プロジェクトを含め、NSFは2015年に大凡4,000万ドルに上る助成金を37のCPSプロジェクトに投資した。2008年以降、NSFは全てのCPSの基本となる基礎的知識の構築に2億5,000万ドル以上を投資してきた。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]