[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2015/05/12
抄訳記事公開日:
2015/06/26

新しい医学研究のイニシアチブに議会で急な進展

On Capitol Hill, New Initiatives for Medical Research Advance at Brisk Pace

本文:

2015年5月12日付の米国科学振興協会(AAAS)による発表記事の概要は以下のとおりである。

複数の新法案と連邦政府助成金は医学研究と保健の改善を秘めている。

米国科学振興協会(AAAS)主催の科学技術政策に関する第40回年次フォーラムにおいて専門家パネルは議会と大統領府の新しいイニシアチブにより国立衛生研究所(NIH)の予算が増強され、医薬品の承認が効率化され、精密医療(precision medicine)の技術がより広く癌やその他の病気の治療に使われる日の到来を加速する可能性があると述べた。
これらの予算化の試みは、うまく運べば米国の医学研究における10年間に及ぶ全資金提供源からの提供資金の減少に近い状態に歯止めをかけられる。

下院のエネルギー及び商業委員会でフレッド アプトン(Fred Upton)議員が座長を務めるパネルは「21世紀の治療(21st Century Cures)」法案を今後数週間以内に書き上げると期待されている。6月にも下院の採決に持ち込めると思われているこの法案は、NIHに対する投資を2016会計年度から5年間にわたって年間20億ドル増額し堅調で切れ目の無い資金の流れを確保する。4月29日に発表されたこの法案の討議草案は、更に新医薬品の利益とリスクに関する食品医薬品局(FDA)の意思決定に患者の声をより良く反映する条項をも包含している。この法案にはモバイル技術の開発を開拓する遠隔治療(telemedicine)の部分が含まれる。昨年40億ドルに上るベンチャーキャピタルの資金がデジタル健康産業に投じられた。心機能の測定値を記録して伝達する機器など、保健医療の増進を図るモバイル技術の成長は早い。

上院の健康、教育、労働及び年金委員会(HELP)でも法案化を検討中で、それはラマー アレキサンダー(Lamar Alexander)上院議員とリチャード バー(Richard Burr)上院議員が共同で発表した報告書「より健康的なアメリカ人の為のイノベーション “Innovation for healthier Americans” 」に基づく。この報告書は、FDAが安全な治療法及び医療機器をより迅速に患者に届けるために取り得る手段について討議された内容を示している。

同時に、大統領府はオバマ大統領が1月の一般教書演説で発表した精密医療イニシアチブ(Precision Medicine Initiative)を推進している。政権は2016年会計年度において当イニシアチブに2億1,500万ドルを支出する提案をした。このイニシアチブの短期的な目標は遺伝子、蛋白、ヒト代謝の理解における研究の進歩を、特定の癌に絞った標的化治療へ応用する事である。長期的には、イニシアチブは精密医療を殆ど全ての健康と病の領域に展開するに必要な情報を生む。その取り組みは、個人の電子的健康記録にリンクされる遺伝子情報、ライフスタイルに関する情報、その他の生物医学データを共有する事に同意する百万人以上のボランティアを擁する研究コホート群の創生を含む。この研究のゴールの一つは次の疑問「医学及び家族歴からは病気に罹る事が示唆されるのに、何故一部のヒトは疾病に対する耐性を持っているのか?」に答える事である。精密医療イニシアチブは、生物医科学の分野のみならず新技術の使い方やシステムがより良く稼働する為の実験の機会を提供する。電子的な健康記録の活用の増加に伴い、これらの健康記録に対するアクセスの相互運用(interoperability)について多くの検討がなされている。

下院、上院そして大統領府のイニシアチブのそれぞれのバージョンが1月の特定の1週に発表され、党派心により引き起こされる手詰まり状態が日常茶飯事の首都では珍しく全てが相当活発なペースで前進している

今後の課題
 人々がどの様にして医療関係者又は医療サービスにアクセスしているか、医療ケアにかかる費用、そのケアの結果患者はどうなるかなど、医療サービスの研究と称される分野ではまだ予算が極端に少ない
 より効率的で効果的なケアを提供する方法の研究から最も利益を被る立場にあると思われる保健医療の提供者と保険者は、主要な産業界の中でR&Dに対する投資が最も少ない。
 医学研究に対する支出を増大させる事に関しては、1月にエリザベス ワーレン(Elizabeth Warren)上院議員から提案された上院の法案に包含されているアイデアでは、不法な販売手法に携わった医薬品会社には純利益の1%に相当する金額に、一部でも連邦政府の補助金を受けて開発された超大型新薬の数を乗じた金額を罰金として払わせる。この罰金はFDAに集められて医療用製品の行政科学の進歩の財源やNIHに配分され満たされない医療ニーズの疾患の研究やその他の目的に使われる。もし過去5年の間に実施されていればNIHの予算が毎年約60億ドル上乗せされていたと思われる。

1995年から1999年まで下院議長を務めた共和党のニュート ギングリッチ(Newt Gingrich)議員は最近の新聞の論説で、1994年の選挙後の5年間の取り組みの様に議会はもう一度NIH予算を倍増すべきであると述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]