[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
フランス科学アカデミー
元記事公開日:
2015/05/18
抄訳記事公開日:
2015/07/03

欧州市民イニシアティブ(ICE)の欧州における動物実験全面停止要求に関するフランスアカデミーの声明

Déclaration sur l'expérimentation animale

本文:

フランス科学アカデミーの2015年5月18日付け標記声明文書の概要は以下のとおり。

欧州における動物実験の全面禁止及び(研究目的の動物利用を規制している)EU指令2010/63号の廃止を狙った欧州市民イニシアティブ(ICE)の要求”stop vivisection”を受けて、フランス医学アカデミー、フランス科学アカデミー、フランス薬学アカデミー、フランス獣医学アカデミーは、次の諸項に示す認識を再喚起するものである。

a)EU指令2010/63号は研究者に対して、動物の保護・福祉に関する厳格な規制を遵守するよう要求している。
b)動物を利用しない代替方法は、それが科学的に可能な全ての場合において活用される。
c)上記代替方法は動物に関する試験や研究の全てを代替出来るものではない。既知のいかなる代替方法も、器官間の相互作用を把握することはできず、同一器官の多様な機能を再現できない。そういう理由で動物の完全性、複雑性の助けを借りる必要がある。現状で動物実験を放棄することは、人や動物の医療に関する進歩の放棄に同意することになる。
d)動物実験は同様に(ペットや家畜など)動物医療の進歩にも必要であることを再認識すべきである。
e)ヒトと動物が生理学的に異なると言う理由で動物実験が無益だという考え方は正確ではない。確かにヒトは動物とは異なるが、マウスの遺伝子とヒトの遺伝子の間には大きな相似性があることを再認識してもらいたい。

人間医学の大きな進歩は動物実験のおかげで実現されて来たもので、今後の進歩もこの種の研究に左右される。がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、その他多数の人の苦痛の原因となっている重大な病気に関する現在進行中の研究の停止を、欧州市民が望んでいるとは考えにくい。

上に述べたすべての理由により、フランスの上記各科学アカデミーは、動物愛護の倫理を尊重しつつ現行規制に準拠して、欧州における研究目的での動物利用の可能性を維持する必要性があることについて、欧州議会及び欧州委員会の配慮を要請するものである。

[DW編集局+JSTパリ事務所]