[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国民教育・高等教育・研究省(MENESR)
元記事公開日:
2015/07/02
抄訳記事公開日:
2015/08/21

高等教育・研究の現状 2015年版

Publication de l'édition 2015 de l'état de l'Enseignement supérieur et de la Recherche

本文:

国民教育・高等教育・研究省は2015年7月2日付けで標記文書を公表した。本文書より研究に関する部分を抜粋要約して以下に記す。

・フランスの国内研究開発支出(DIRD)は2012年に465億ユーロに達し、国内総生産の2.23%を占めた。これは韓国(4.4%)、日本(3.4%)、米国(2.7%)、ドイツ(3.0%)に次ぐが、英国(1.7%)より上位にある。2013年のDIRDは470億ユーロ(国内総生産の2.23%)の見込み。

・企業による研究開発の取り組みが顕著で、2012年フランス全土で実施された研究開発の65%を占めており、59%の資金を供給している。その供給額は301億ユーロに相当する。公的セクターのDIRDは2012年は165億ユーロで、大半は研究機関(55%)に依拠するが、高等教育施設(40%)にもかなり依拠している。2012年にフランスで研究開発業務を実施した企業の86%が中小企業で、DIRDの16%を占める(その半数以上がサービス業務)。DIRDの59%を占める大企業は、ハイテク及び中度ハイテクに関する研究開発の4分の3を実施している。その結果企業のDIRDは50%以上が「自動車産業」、「航空・宇宙製造業」、「製薬業」、「化学工業」、「機器・計測装置製造業」、「部品、電子カード、周辺装置」の6研究分野に集中している。他方で企業は、新材料、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、環境などの分野横断的領域にそのDIRDのかなりの部分を割いている。

・約3分の1の企業が技術イノベーション企業で、その内70%が何らかの研究開発業務に着手している。公的研究は、企業の研究開発支出の70%に関与して研究に最も積極的な14%の技術イノベーション企業と協力関係にある。これらの企業は主に「科学技術事業」及び「製造業」のセクターに属している。

・企業がこのような取り組みに対して国から受ける支援には、直接支援、民生用・軍事用の領域における公的機関との協力、研究費税額控除(CIR)や新興イノベーション企業(JEI)資格認定などの税制措置がある。2012年は企業の研究開発業務の6%が公的資金の支援を受け、CIRによる信用額は53億ユーロに達している。地方自治体も(土地・建物等の)資産管理や技術移転への投資などで研究努力に一役買っている。2013年の地方自治体の研究・技術予算は13億ユーロと見込まれている。

・研究者及び支援要員を全部合わせて、2012年に研究開発に充てられた要員数は約564,500人。フルタイム換算では412,000人強になる。2007~2012年に研究者数は急速に(+16.8%)伸び、フルタイム換算で259,100人(2011年比で+10,000人)に達した。これはEUにおいてドイツに次ぐ第2位である。この伸びは政府機関(+5%)より企業(+26%)において大きい。2012年は研究者の60%が企業に在籍している。企業では研究者の2人に1人がこれらの部門(自動車産業、情報処理・情報サービス事業、科学技術専門事業、航空宇宙製造業、製薬業、機器・計測装置製造業)で雇用されている。研究要員数の伸びは主としてサービス部門によるもので、工業部門の10倍の速い伸びである。

・研究要員に占める女性の割合は2012年は29%に上昇した。政府機関(40%)に比べ企業(22%)では小さい。また研究者では26%で、支援要員の35%に比べて小さい。2011年は企業の研究者の2人に1人以上が工学士であるが、博士号を有する企業研究者は12%に過ぎない。公的研究は博士号取得者の主な就職先となっており、学位取得後5年で、2人に1人が公的研究の仕事をしているのに対し、4人に1人が民間研究に従事している。残りはその他の職に就いているが、自分たちの雇用に不満を抱き、待遇も劣っている。

・科学発表論文及び特許出願は研究活動の評価が可能な2大生産活動である。そこには明らかに国際競争が存在する。2013年、フランスは科学発表論文の世界シェアで世界第6位にランク付けされている。このシェアは3.5%であるが、科学の進歩に対するインパクトをより適切に表す発表後2年間の引用度合いは3.9%である。この2つの比率は1999年以降低下しており、特に中国、インド、ブラジルなどの新興国の登場の影響がある。フランスの地位の変動は、発表論文のシェアは低下しているがインパクト係数は上昇しており、しかも世界平均よりは上位にあるという欧州の他の大国とほぼ同等である。分野別に見ると全般的には世界の動向と均衡が取れている。その中でもフランスは数学における強い専門性が顕著である。

・フランスはまた特許に関する国際競争でも良い位置にある。2012年にはフランスは欧州特許制度で世界第4位(出願登録件数の6.4%)にランクされ、米国特許制度で世界第7位(交付特許件数の2.1%)にランクされている。「輸送」、「ナノテクノロジー、微小構造」、「精密有機化学」、「エンジン、ポンプ、タービン」、「建築・公共土木事業(BTP)」、「薬品」、「材料、金属」などの専門領域にわたる。上記両制度とも、中国、韓国などの新興国の参入により、フランスの世界シェアは2004年以降減少している。

・第7次研究開発枠組プログラム(FP7)の一環でEUが割り当てた11.5%分の配分により、フランスはドイツ、英国に次ぐ第3番目の受益国である。原子力、宇宙、航空が得意領域であるが、フランスの実行当事者機関の動きは不十分で、国全体としては十分な資金を得ていない。

[DW編集局+JSTパリ事務所]