[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2015/08/14
抄訳記事公開日:
2015/10/29

物質科学:次世代の素材革命を推進

Materials Science: Advancing the Next Revolution of “Stuff”

本文:

2015年8月14日付の国防高等研究計画局(DARPA)による新素材開発に関する発表記事の概要は以下の通りである。

DARPAは、国家安全保障のため、材料科学の発展に向けて新たなアプローチを進めている。DARPAの防衛科学室(DSO)は革新的な新ツールを利用して、超高速レーザーイメージャーから革新的な化学合成方法に至るまでの国家安全保障を大幅に強化する可能性を秘めた新素材の開発を追求している。

新素材の開発に当たっての大きな課題は、ナノスケールにおいて見られる素材のユニークな特徴の保持と開発の難しさである。原子に近いスケールにおいてユニークで潜在的に有用な電気的、光学的並びに引張強度等の特性を示す素材は多いが、それをミリメートルやセンチメートル規模の製品やシステムに加工するとそれらの特徴を喪失する。DSOの原子から製品へ(Atoms to Product, A2P)プログラムでは、好ましいナノスケールの特性を、マクロスケールの素材、部品並びにシステムにおいて保持できる組み立て方法を開発する事によりこの境界線を乗り越える事を目指す。

個別の原子からスタートし、それらをナノ構造に組み立て、更にナノ構造をより大きなマイクロデバイスに組み立てると言う全く異なったアプローチを採用する。A2Pは超高速処理でナノスケールの組み立てを制御する新方式をうまく活用する事により、新規のマイクロデバイスを経済的に製造することを目指す。

MCMA: DARPAは、制御された微細構造アーキテクチャーを有する素材(Materials with Controlled Microstructural Architecture、MCMA)プログラムを通して、ユニークな特性を有する新素材を創生するために他のアプローチも追求している。このプログラムは素材のマイクロ構造を制御し、それによって構造的な効率の向上と、例えば鋼鉄の強度とプラスチックの軽量を併せ持つ事など、伝統的には単一の物質では同時に達成できない特性の実現を図ろうとしている。

MATRIX: 素材の内部ナノ構造の制御が可能となった場合の潜在的な利点の一つは、素材が反応を触媒してエネルギー変換を実施する事が出来る様になり、それ自体が実質的なデバイスとなりえる。これがDSOの変換用の素材(Materials for Transduction、MATRIX)プログラムの目的であり、A2Pの場合も同様に、新素材の有用な特性をデバイス又はシステムの次元で実現する事を目標としており、この場合はエネルギー変換を行う素材の開発を目指している。

XSolids: DSOの拡張固体(Extended Solids、XSolids)プログラムは異なるレベルの素材の開発を目指しており、現在では大気圧の数百万倍までの超高圧下でのみ製造および存在が可能な素材を対象としている。超高圧において多くの素材は物理的、機械的及び機能的特性が劇的に改善する。これらの新規「結晶多形」は、半導体電子工学から推進技術に至る多様な領域において、そして更に航空宇宙から地上車両に亘る広い範囲での構造的な応用において、顕著な性能向上をもたらす可能性がある。

LoCo: 上記のスケールアップに伴う素材の問題と取り組む諸プログラムとは少し異なり、物質の極めて薄い膜の製造における精密度の向上と取り組むDSOの素材プログラムが素材合成の局所制御(Local Control of Material Synthesis、LoCo)である。目標は薄膜素材の開発や表面膜の進歩である。これらは光学系から先端電子工学に至るあらゆる軍事用途に利用される。従来の高度な薄膜形成は高温での沈着や焼鈍(アニーリング)によるが、その欠点は、多くの国防総省関連の回路基板の温度上限を超える為に応用の機会が限定されている事である。LoCoプログラムの研究者は、室温又は室温に近い温度での規則正しい物質沈着の実現に向けた第一段階として新しい戦略とツールを開発しつつある。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]