[本文]

国・地域名:
中国
元記事の言語:
中国語
公開機関:
中国科学報
元記事公開日:
2015/11/12
抄訳記事公開日:
2016/01/25

白春礼 中国科学院・院長:基礎研究、独創性に際立ったイノベーションの強化

白春礼:加强基础研究 强化原始创新

本文:

2015年11月12日付の「中国科学報」ネット版は、CASの白春礼院長が、基礎研究と独創性に際立ったイノベーションを強化すると述べたと報じた。本記事ではその概要をまとめる。

中国科学院(CAS)の白春礼院長は、「基礎研究と独創性に際立ったイノベーションを強化し、これまでのイノベーションの統合などを促進することで、再革新を図る」と述べた。具体的な内容は下記の通りである。

一国の科学技術の実力と総合力は、基礎研究のレベルとイノベーション能力によって評価される。中国共産党の第18期中央委員会第5回全体会議(五中全会)で、イノベーションが国家発展における主体的な地位を確保し、イノベーション駆動型発展戦略を基本理念とすることが指摘された。

(一)基礎研究と独創性に際立ったイノベーションを強化し、これまでのイノベーションの統合などを促進することで、再革新を図ることの重要性と緊迫性を十分に認識する。

基礎研究と独創性に際立ったイノベーションを強化し、これまでのイノベーションの統合などを促進することで、中国のイノベーション能力を向上させる。また、経済発展を制約するボトルネックとなる問題を解決し、中国をイノベーション型国家及び科学技術の強国へと発展させるとともに、社会経済の発展により確固たる知識基盤と発展の原動力を提供し、中国を世界の科学技術や産業競争力における主導的な地位に立たせる。先進諸国においても、将来の国際競争や未来を見据えた設計に基づき、イノベーション創出の取組みの強化などが政策として掲げられている。

また、第12次5カ年計画において、鉄系超伝導、ニュートリノ振動、量子異常ホール効果、幹細胞、量子科学等の分野の研究においては世界レベルとなり、有人飛行、高速鉄道、情報技術、高性能コンピュータなどの科学技術や産業は国際レベルに達している。

ただし、世界とのギャップはまだ存在しており、海外からのコア技術の高い依存、新たな研究領域の創出の不足、独創的・科学的アイデアの実現不足などの課題を解決すべく、基礎研究と独創性に際立ったイノベーションを強化しないといけない。

(二)戦略的配置、ハイレベルの科学技術基地及び科学研究のプラットフォームの建設を強化し、イノベーションの物質的・技術的基礎を強化する。

フロンティア科学の発展を合理的に配置し、基礎研究を統合し、国際科学のホットスポットの課題(例:暗黒物質・エネルギー、量子制御、極限環境における珍しい物理現象、幹細胞、再生医療、合成生物、脳・認識科学、全地球的変化)に目をつける。合意のないイノベーション研究を支援するプログラムや国際協力を通じて、国家全体の発展にとって重要なコア技術のブレークスルーを目指す。国家の経済社会発展のニーズに基づき、資源配置を最適化し、国家重大科学技術プログラムを次々と実施し、次世代情報通信技術、新エネルギー、新材料、航空・宇宙、バイオ医薬、先進製造などにおけるコア技術のブレークスルーを加速し、牽引力のある破壊的技術を促進し、戦略技術と戦略的製品の形成を加速し、新興産業を育成する。ボトルネックとなる制約的な課題に目をつけ、系統的な技術解決案を定め、経済社会のモデルチェンジを支援する。

特色豊かなハイレベル大学及び科学研究機構の創設を加速し、科学院所の分類改革を積極的に推進する。情報、宇宙、材料、エネルギー、海洋等の新たな重要イノベーション領域のための国家実験室と国家科学センターの創設を加速し、ヒト・カネ・モノの配置を最適化し、世界一流の人材を集める場所を作り出す。

(三)ハイレベル・イノベーション人材を育成し、基礎研究レベル、独創性に際立ったイノベーション、これまでのイノベーションの統合などを促進することで再革新の能力を大幅に向上させる。

大学、工学、イノベーションに関わるビジネスなどのあらゆる分野において数多くの革新的リーダーの人材を育成する。国家重大科学研究計画及び重大プロジェクト、重点科学研究基地に託し、ハイレベル・イノベーション・チームの組立てを強化する。革新的なリーダー人材に一層のヒト・カネ・モノの支配権、技術的方向性の決定権を与える。

教育改革にも着手し、科学技術と組み合わせた教育を推進する。若手人材を育成し、若手人材科学研究支援体系を完備する。国家科学基金、特別プロジェクト等による支援を強化する。海外のハイレベル人材を招致し、「千人計画」(*1)、「百人計画」(*2)、「長江学者奨励計画」(*3)などの国家級重大人材誘致プロジェクトを引続き推進する。

また、海外からの科学技術人材の移民政策の緩和、ハイレベルな科学技術イノベーションを主導している首席科学者の誘致、イノベーション起業家の誘致などを積極的に進める。

(四)協働型のイノベーション、独創性に際立ったイノベーション、これまでのイノベーションの再統合などを促進することによる再革新の創出と総合的なイノベーション・チェーンの形成。

協働イノベーションを大いに推進し、海外との科学技術交流及び協力を強化する。中国における基礎研究、応用研究、産業との距離は縮まっておらず、基礎研究が社会経済のニーズも満たした形となっておらず、各アクターが連合化などを通じて統合していく必要がある。更に、研究開発費を増加させることが重要で、税制・金融・政策などを組み合わせて、企業の基礎研究に対する投資を積極的に牽引するべきである。また、高速鉄道、原子力発電、風力発電、転移的な情報ネットワークの拡大などのハイテク技術の推進やハイテク企業の育成、海外での研究開発拠点の創成なども重要になる。基礎研究、フロンティア・イノベーション研究を適度に展開し、破壊的技術イノベーションを重要視する。

(五)優遇政策を作り上げ、基礎研究及び各種のイノベーション活動の土壌を作る。

科学技術体制の改革を強化し、資源配置を最適化し、イノベーション政策を完備し、内包型のイノベーション支援優遇政策体系を構築する。知的財産権に対する保護を強化し、知識の価値が主導する配分政策を実施し、科学研究者の成果移転による収益の配分比率を拡大する。

優れたイノベーション文化を作り上げ、イノベーション・プログラムの審査評価メカニズムを改革する。科学の普及を推進し、国民の科学的文化・教養とイノベーション意欲を向上させる。

(*1)正式名「海外ハイレベル人材招致『千人計画』」、2008年実施。
(*2)「百人計画」は、中国科学院が主導して1994年に開始された中国初の科学技術分野の優秀人材招致、育成政策である。
(*3)「長江学者奨励計画」は、1998年に始まった中国教育部と香港李嘉誠基金会が共同で資金支援を行う高等教育人材の育成計画である。

[JST北京事務所]