[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学アカデミー(NAS)
元記事公開日:
2015/12/03
抄訳記事公開日:
2016/02/10

ヒトの遺伝子編集技術に関する国際サミットの声明

On Human Gene Editing:International Summit Statement

本文:

2015年12月3日付けの全米科学アカデミーの標記報道発表の概要は以下のとおりである。

過去50年間の分子生物学における科学的進歩が、医療における目覚しい進歩をもたらした。このような進歩の中には組換えDNA技術やES細胞の使用など、倫理的社会的に大きな問題となっているものもある。科学界はこのような問題を特定して対処する責任を一貫して認識している。その場合、一定範囲の利害関係者が取り組むことで、社会的問題にも適切な対応を図りながら、ヒトの健康に対して大きな恩恵が得られることを可能とするような解決策を得てきた。

ヒトの遺伝子編集技術に関する国際サミット(International Summit on Human Gene Editing)組織委員会のメンバーは、この問題に関する3日間の思慮に富んだ議論を踏まえて、次のような結論に到達した。

1) 基礎研究及び前臨床研究
徹底した基礎研究や前臨床研究が必要なことは明らかで、推進すべきである。その場合下記の事項について適切な法的・倫理的規則や管理に従う必要がある。
・ヒトの細胞の遺伝子配列を編集する技術
・提案されている臨床使用における潜在的な利益とリスク
・ヒトの胚細胞・生殖細胞の生物学的理解

研究の過程で万一ヒトの初期の胚細胞や生殖細胞が遺伝子編集を受けた場合、改変された細胞は妊娠の成立に用いられてはならない。

2)臨床使用:体細胞の場合
有望・有益な遺伝子編集技術臨床応用の多くは、(ゲノムが次世代に引き継がれない)体細胞のみを遺伝子配列の組み換えを対象としている。提案されている遺伝子編集の各々について、不正確な遺伝子編集などのリスクや潜在的な利益について理解する必要がある。

3)臨床使用:生殖細胞の場合
配偶子または胚の遺伝子組み換えをする目的で、遺伝子編集技術が原理的には使用される可能性がある。生殖細胞の遺伝子編集は重要な問題を多く含んでおり、次のような条件が整備されない状況下でその臨床利用を進めるのは無責任である。
・リスク、潜在的利益、代替手段の適切な理解と均衡を図ることにより、関連の安全性及び有効性の問題が解決済みであること
・提案されている応用の適切性について広範な社会的合意が存在すること

4)国際会議継続の必要性
ヒトゲノムは全ての国家間で共有されるものであり、国際社会はヒトの生殖細胞編集技術の受け入れ可能な使用法に関して、規範の確立と規制の調和に向けて努力をする必要がある。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]