2016年1月19日付の「中国科学報」ネット版は、両院院士（中国科学院、中国工程院）が選出した中国・世界10大科学技術ブレークスルーが発表されたと報じた。本記事ではその概要をまとめる。

中国科学院、中国工程院が主催し、中国科学院学部工作局、中国工程院弁公庁、中国科学報社が共催し、中国科学院・中国工程院院士（アカデミー会員）が選出した2015年度中国・世界10大科学技術ブレークスルーは、2016年1月19日に北京で発表された。同選出活動は今年で22回目を迎え、科学技術の普及を推進することになった。

2015年度中国10大科学技術ブレークスルー
1．多自由度の量子テレポーテーションが初実現
中国科学技術大学の潘建偉教授、陸朝陽教授らの研究チームによって実現された。
2．北斗が「宇宙ネットワーク」を構築、初の衛星打ち上げ成功
中国科学院（CAS）及び上海市政府によって共同設立された上海微小衛星（マイクロ・サテライト）エンジニアリング・センター（SECM）が研究開発した。
3．「長征6号」初打ち上げ、1度に20基の衛星搭載で新記録を樹立
上海航天技術研究院（SAST）が研究開発した「長征6号」ロケットは、1度に中国航天科技集団公司、中国国防科技大学、清華大学、浙江大学、ハルビン工業大学等が研究開発した開拓1号、希望2号等のマイクロ・サテライトを20基搭載した。
4．中国初の国産大型機C919がラインオフ
中国商用飛行機有限責任公司が自主研究・開発した。
5．高解像度スプライセオソーム三次元構造が解析
中国科学院院士（アカデミー会員）、清華大学の施一公教授が率いた研究チームによって解析され、発表された。
6．ワイルフェルミ粒子を初めて発見
中国科学院物理研究所の方忠研究員が率いたチームによって発見された。
7．ブラックホール高速ジェットの新たなモデルを発見
中国科学院国家天文台の劉継峰研究員が率いたチームがブラックホールの高速ジェット流を観測し、ブラックホールが周辺物質の吸収及び噴出のメカニズムを提示した。
8．細胞シグナル伝送における重大な科学難題をブレークスルー
中国科学院上海薬物研究所の徐華強研究員が率いた国際チームによって難題が突破された。
9．初の変形可能な自己駆動できる液体金属ロボットが誕生
劉静教授が率いた中国科学院理化学技術研究所・清華大学医学院共同研究チームによって研究開発された。
10．「永久磁石高速鉄道」牽引システムが初の試験運行に成功
中国中車股フン有限公司（CRCC）が研究開発した永久磁石同期牽引システムを搭載した「永久磁石高速鉄道」は初めての試験運行に成功した。
2015年度世界10大科学技術ブレークスルー
1．米国癌ゲノムアトラス計画（TCGA）が完成
2006年から開始された同計画は米国立衛生研究所（NIH）の一機関であるNCI(米国立癌研究所）と米国立ヒトゲノム研究所が中心に進め、16か国の科学者らにより、約1000万の突然遺伝子変異を発見した。
2．エボラワクチン、接種者に100％の保護を提供
同ワクチンはドイツのメルク（Merck KGaA）社によって製造された。
3．細胞老化を制御する重要因子を発見
ハーバード・メディカル・スクールの許其開研究員らによって発見された。
4．究極のバッテリー（リチウム・空気電池）のメカ二ズム解明研究に重大なブレークスルー
英国ケンブリッジ大のTao Liu博士、Michal Leskes博士、Wanjing Yu博士、Amy J. Moore博士、Lina Zhou博士、Paul M. Bayley博士、Gunwoo Kim博士、Clare P. Grey教授らによって開発された。
5．最大のソーラー飛行機が初大陸間飛行
スイス連邦工科大学ローザンヌ校で進行中の有人太陽光発電型電動飛行機プロジェクト「ソーラー・インパルス2」は中国-日本-ハワイまでの初大陸間飛行に成功。
6．1つの光子で3000もの原子とのもつれを生み出す技術の開発
米国マサチューセッツ工科大学Vladan Vuletic教授、Robert McConnell氏, Hao Zhang氏, Jiazhong Hu氏、セルビア・ベオグラード大学の物理学者Senka Cuk氏によって開発された。
7．火星表面に液体水が流れている強力な証拠を発見
米航空宇宙局（NASA）によると、火星に液体水がある強い証拠が見つかったとのこと。
8．新ワクチン、HIVを撃退する可能性
スクリプス研究所（TSRI）、国際エイズワクチン推進構想（IAVI）、ロックフェラー大学の研究チーム、およびコーネル大学の研究チームは、AIDSに対抗する実験的なワクチン候補（OD-GT8 60mer）がネズミの体内でHIV感染をブロックするネズミの免疫システムを刺激したと発表。
9．グローバル海洋調査による大量の新しい生命の形を明らかに
フランス・パリを拠点とする非政府機関のTARAおよび欧州分子生物学研究所らのチームにより調査・データベース化された。
10．米探査機、冥王星へ最接近
アメリカ航空宇宙局(NASA)が2006年1月に打ち上げたニュー・ホライズンズ（New Horizons）は冥王星に最接近し画像撮影などを行った。

[JST北京事務所]