[本文]

国・地域名:
ロシア
元記事の言語:
英語
公開機関:
ロシア大統領府
元記事公開日:
2016/01/22
抄訳記事公開日:
2016/03/15

大統領とロシア科学アカデミー(RAS)フォルトフ総裁の会談

Meeting with President of the Russian Academy of Sciences Vladimir Fortov

本文:

ロシア大統領府の2016年1月22日付標記発表では、プーチン(Vladimir Putin)大統領とフォルトフ(Vladimir Fortov)ロシア科学アカデミー(RAS)総裁との会談の内容を報じている。議論の主たるテーマはRASの2015年度の業績と優先課題に関するものである。フォルトフ総裁の発言の概要は以下のとおり。

2015年は改革が進行中ということもあり、波乱の年であったが、同時に進歩や成果が見られた年でもあった。科学的進歩や成果についていくつか例を挙げる。

・ロシアの科学者が新たな超ウラン元素(No.118、117、115)の発見という卓越した業績を残した。ドゥブナにある合同原子核研究所の科学者による成果である。

・新たに医科学アカデミーと農業科学アカデミーの2つのアカデミーが加わって学際的研究の強化が進行中であるが、1年に及んだ移行期は終了し、現在医科学アカデミーとの共同研究についてレビューしているところである。例として陽子(プロトン)によるがん治療があり、これは脳内部のがん治療に重イオン加速器を用いるものである。がん性腫瘍を除去しようとする場合、健康な細胞を通過する必要がある。ここで使用するイオンは光速に近い速度で移動するイオンで、10メガエレクトロンボルトのエネルギーに達する。このイオンが結果として獲得する特性は、固体や液体に入るとその進行の開始時点ではなく終了時点で、つまりターゲットの奥深くでエネルギーを発することである。この減衰過程は徐々に減衰する電磁場のそれとは全く異なる。

この一連の装置はロシア科学アカデミーの物理学研究所で製作され、オフィスにも置ける大きさであること、ドイツや米国が市場に出しているものより5~6倍安価であることなど、非常に効果的であることが分かっている。

・医薬をテーマとするロシア科学アカデミーの会議を開催した。現在の薬理学では化学、物理学、生物学、コンピュータ技術などの最新の方法を活用している。医薬品の開発は特に難度の高い研究領域である。多様な分野の科学者達が着想、視点、展望を共有するという意味で会議は非常に有意義であった。外国で実施されている研究に優るとも劣らぬ興味深いプロジェクトが多数あるが、残念ながらこの分野で先端にいるとは言い難い。しかし正しい方向に向かって進んでいると考える。

・大統領が定めた優先課題(医学はその一つ)を考慮に入れてアカデミー内部では別の方策を講じている。医学における物理学の活用は一つの興味深い領域である。フェムト秒レーザー(超短パルスを発するレーザー)の例を挙げる。これは眼病の治療に非常に有効である。一般物理学研究所と関連の病院が白内障の除去から網膜治療まで多様な治療に幅広く使えるデバイスを開発した。

・(ロシア科学アカデミーと医科学アカデミーを統合したことはよい効果を生んでいるかとのプーチン大統領の質問に対しフォルトフ総裁は是と答えた上で、)プラズマ医学プログラムの準備が整ったところである。プラズマは、抗生物質に対する耐性を持つようになった細菌に対して必要な効果を発揮する可能性がある。電子が高温に達し殺菌効果を持つプラズマ・バーナーを作製することが可能である。この場合エネルギーの大半を含むイオンは物質を加熱しないので、組織を破壊することはない。この分野ではロシア保健省傘下のガマレーヤ疫学・微生物学研究所、ミュンヘンのマックス・プランク研究所、及び日本の科学者らと共同研究を行っている。

・遺伝子組み換え植物の導入を検討する。これは、高収量の生産、細菌や害虫に対する抵抗力など素晴らしい特性があり、真剣に取り組むべき領域である。ブレークスルーとなる開発を期待して研究を行うという意味では現時点では難点があるが、この研究への投資は必要である。

[DW編集局]