[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2016/01/29
抄訳記事公開日:
2016/04/26

STEM系学位取得経路の多様化

Study Urges a Movement Away From Traditional STEM Pipelines to Embrace Diversity of STEM Educational Pathways

本文:

2016年1月29日付けの米国科学振興協会(AAAS)の標記発表記事の概要は以下のとおりである。

ナショナル・アカデミー・プレス(NAP)が先ごろ発行した調査報告「2年および4年のSTEM系課程の障壁と機会」によれば、中等教育修了後の教育制度、STEM系学部、認可組織、州及び連邦政府の教育政策は、学部レベルのSTEM系学位を取得するには唯一一本の道しかないと言うSTEMコース観に基づいており、これは、STEM系学位取得を目指す学生には多様な経路があることをほとんど無視している。

上記の状況においてその影響の規模が大きいのは、黒人、スペイン語系住民、アメリカ先住民など実際より低く評価されているマイノリティ出身の学生である。2年制及び4年制の学部課程希望者(十分な評価を受けていないグループを含む)の全員がSTEM系学位への関心が高いと言う事実にも関わらず、STEM志願者全員の課程修了の割合は約40%で、十分な評価を受けていないグループ出身の学生では6年かけて修了という最低の割合になっている。

報告書を作成した委員会の委員長を務めたAAAS教育・人的資源プログラム部長のシャーリー・マルコム氏によれば、報告書ではSTEM教育の効果に関する通説の限界の実態を詳述し、学生に中心を置いた解決策を迫っている。そのような解決策の例として、従来の講義とは異なり根拠に基づく指導、実務能力の訓練には1日だけの短いワークショップではなく夏季研修による研究に基盤をおく履修課程の採用、学生が転籍して卒業に一歩でも近づけるよう支援するべく2年制と4年制との間のより強力な連携、転籍に当たってはコース学習の内容の網羅性よりも成果に重点を置くこと、などを挙げている。

学生はSTEM系大学課程の修了の為に非伝統的な経路をとろうとしている。それらは、複数の教育機関で取得した履修単位の繋ぎ合わせ、2年制から4年制への転籍(多くの場合、学位や修了証なしで)、4年制から2年制へ転籍、同時または逐次的に複数の教育機関への登録、重複登録や先行履修コースによる大学レベル課程単位の高校での取得、などである。

問題は、学生の修めた成果の評価方法にあると考えられる。報告書が特に注目しているのは、不利な条件に置かれた学生に対する質の高いSTEM教育の実施という課題に取り組む教育機関は、エリート教育機関に比して乏しい教育資源でそれを行っていることである。しかし、多くの場合現行の(学業成績による)教育機関への予算配分はエリート校に有利になっており、資源の乏しい教育機関は不利である。

この予算配分の問題解決策として報告書が提案する一つの方法は、コミュニティ・カレッジの課程の履修単位の移行を増やすよう方針を変更し、これによる2年制と4年制との間の流動性を認めることである。しかし「これによってもっと大きな問題が多数生じることになるので、さらなる研究が必要である」とマルコム氏は述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]