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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
- 元記事公開日:
- 2016/06/27
- 抄訳記事公開日:
- 2016/08/15
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排気ガスで環境を救う?
- 本文:
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産業界およびアカデミアの17パートナー機関が製鉄所の排ガスからの資源回収に興味を持っており、これに関して連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。
鉄鋼生産の拠点ドイツは如何にして競争能力を維持するのか。これに対する答えが“Carbon2Chem“プロジェクトである。8つの企業がマックス・プランク協会、フラウンホーファー協会、大学と共同で、高炉からの排気ガスを燃料、プラスチック、肥料のための一次製品に転換する、世界的に利用可能な方法を開発するというもの。これに必要な水素は再生可能エネルギーによる余剰電力によって生産する。Carbon2Chemプロジェクトによりドイツの鉄鋼産業が排出する年間2,000万トンCO2が将来、有効利用できることになる。これはドイツ製造業および加工産業の年間CO2排出量の10%に当たる。
ヴァンカ大臣は「研究とイノベーションによって環境保護と競争力のある鉄鋼産業を有効に結びつけることができることをCarbon2Chemによって証明する。これによってドイツの鉄鋼産業における雇用を確保し、また産業拠点ドイツを確実なものとする」と強調した。ドイツの繁栄は鉄鋼産業とその9万人の従業員に大きく依存している。自動車、建物、機械等は鉄鋼産業が製造する4,300万トンの鉄鋼によって生まれるもので、ドイツはまだ欧州最大の鉄鋼生産国であるが、国際的な競争によってその競争力は危機に晒されている。
2015年のパリ協定では地球気温上昇を1.5度に抑えることとされた。この目標を達成するため、加盟国には気候中立が義務付けられた。これによって鉄鋼産業はその温室効果ガスの排出を著しく削減しなければならない。この計画に関する記者会見においてヴァンカ大臣は「持続可能な工業生産と確固とした環境保護は互いに緊密な関係にある。Carbon2Chemによってこのことを明示していく。パリ協定に命を吹き込むということである」と述べた。
Carbon2Chem研究プロジェクトは今後10年に各種セクターを横断的に持続可能バリューチェーンを展開するものである。気候の保護はイノベーションを鉄鋼産業全体にわたり前進させることになる。Carbon2Chemの恩恵を受けるのは鉄鋼産業だけでない。化学企業は新しい、クリーンな資源を開拓することになる。ティッセン・クルップ社ヒージンガー社長によれば「今日では様々な分野の境界部分において飛躍的なイノベーションが発生するCarbon2Chemはイノベーションに関するあらゆる領域の関係者を結びつけるものである。基礎、応用、実用、しかも各種セクターのそれらが関係してくる」。
Carbon2Chemは同時にエネルギー転換の二つの重要な問題を解決することになる。電気エネルギーをいかにして貯蔵し、電力ネットワークをいかにして安定させるか、というものである。Carbon2Chemによって基礎研究から市場への架け橋を築くことになる。BMBFはこのプロジェクトを6,000万ユーロあまりで助成する。参加パートナーは2025年までに1億ユーロ強の投資を計画しており、商用化については10億ユーロ以上を見込んでいる。
[DW編集局]