[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2016/06/08
抄訳記事公開日:
2016/08/25

遺伝子ドライブによる遺伝子組み換え生物を自然環境に放つには、さらなる研究と評価が必要

Gene-Drive Modified Organisms Are Not Ready to Be Released Into Environment; New Report Calls for More Research and Robust Assessment

本文:

2016年6月8日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による報道発表の概要は以下のとおりである。

遺伝子ドライブの新たな科学は、環境や公衆衛生上の課題に対処できる可能性があるが、遺伝子ドライブによる遺伝子組み換え生物を環境に放出するには時期尚早で、研究室や高度に管理されたフィールド試験でのさらなる研究が必要である、とNASEMの報告書は述べている。この目まぐるしく変化する研究分野が引き起こす不確実性を見極め、遺伝子組み換え生物の開発・応用に関して十分な情報に基づいて決定を行うべく、報告書の作成に当たった委員会は、遺伝子ドライブ技術の研究とそのガバナンスについては多分野で、共同して、慎重な対応をするよう提言している。

上記委員会は、遺伝子ドライブの研究に対して、研究室からフィールドまでを射程に入れた段階的な試験を実施するように提言している。遺伝子ドライブ活用の目標は遺伝子情報を特定の個体群全体に急速に拡散させることにあるので、その影響を予測することは困難であり、予期しない結果を引き起こす可能性を最小限に抑えることが重要である。段階的試験方式では、全ての段階で慎重な調査や評価を行い、エビデンスに基づく意思決定を行うことができる。

提案された各フィールド試験つまり遺伝子ドライブの組み換え生物の環境放出試験は、厳格な環境リスク評価を実施した上で認可される必要があると、報告書は述べている。遺伝子ドライブの特性、ヒトや環境への影響等を考慮の対象とするこれらの評価は、遺伝子ドライブの影響を見極める上で重要な手段である。2016年5月現在、遺伝子ドライブによる遺伝子組み換え生物に関していかなるリスク評価も実施されていない。

一般市民による議論への参加は、遺伝子ドライブによる遺伝子組み換え生物の活用の結果起こり得る危害や生じ得る利益の定義に役立つものであり、リスク評価や実際の意思決定に組み込まれる必要がある。そこでの検討の結果は、遺伝子ドライブの組み換え生物を環境に放出するか否かの決定に際して、科学的研究の結果と同程度に重要である。本報告書では、研究機関、ファンディング機関、規制機関などの政府機関が、遺伝子ドライブに関する研究、環境リスク評価、公共政策決定への一般参画の取り入れ方について、明確な政策及び仕組みを作成し、維持するよう提言している。

本報告書はまた、フィールド試験や計画的放出のリスク及び環境への影響の評価に関して、現行の規制手続きが遺伝子ドライブには不適切であることを明らかにしている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]