[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2016/07/25
抄訳記事公開日:
2016/09/26

国際協力によるグローバルな課題の科学的解決策

International scientific solutions to our shared global challenge

本文:

ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の2016年7月25日付標記発表では、マンチェスターで開催された「EuroScienceオープンフォーラム 2016」でのジョー・ジョンソン閣外大臣(大学・科学担当)の講演内容を伝えている。概要は以下のとおり。

●国民投票後の優先課題

英国の国民投票から1か月以上が過ぎ、英国とEUとの関係を規定する精密な仕組みについてより詳細な議論が必要とされる。はっきり言えることは、英国はこれまで以上に外に目を向けていくことになる。ただしテリーザ・メイ新首相の発言のとおり、「EU離脱は、欧州を離れることや世界に背を向けることを意味するものではない」。

そういう意味で、”Horizon 2020″の公募において英国の参加者がプロジェクトを主導したり参加したりしないよう頼まれているとか、英国が最終的にEUを離脱した場合に資金を受け取れる自信がないという理由で長期プロジェクトへの応募を渋るといった報告を受けて、心配している。2年間の交渉期間中は英国はまだEU加盟国であり、それによる権利も義務も有している。もちろん英国のEU離脱により新たな課題が生じることは避けられないと理解はしている。

その一方で、英国は世界における新たな地位を構築することで、この変化の時代における英国の研究・イノベーションを守る。欧州大陸においてすらEUが唯一の選択肢ではない。欧州における学術・研究協力はEUより何世紀も前から存在し、欧州の学術研究機関のコミュニティは常にEUよりずっと広域である。スイスにある欧州原子核研究機構(CERN)から欧州宇宙機関(ESA)に至るまで欧州で実施される主要な非EU共同研究において、英国は引き続き主導的な役割を果たしていく。

英国は今後拠って立つべき次のような根本的な強みを有している。
・長きに亘って確立された科学研究支援制度。それにより、研究キャリアのあらゆる段階にある優秀な頭脳を引き寄せてきた。
・大学、既存の研究機関、新設の研究機関などが有する優れた研究インフラ。これら研究インフラへの支援は、2021年までに69億ポンドの新規投資を投入することで確保されている。
・大型の研究インフラ施設へのアクセスの保障。英国は、大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider)のような世界中の大型研究インフラにおいて指導的な役割を担っており、次世代電波望遠鏡(Square Kilometre Array)のような新たなインフラの建設においても主要なパートナーである。

英国はまた、最新の「グローバル・イノベーション・インデックス」で世界第2位にランクされるなど、イノベーションでも大きな成功を収めている。

●ニュートン・ファンド

英国は世界的な研究協力関係の構築にこれまで以上に積極的に努力する。これにより、英国は世界的な課題に関する国際研究の先頭に立てるだけでなく、世界中の発展途上国の経済発展と社会福祉向上を支援することにもつながる。政府の科学イノベーションネットワーク(SIN)が、世界31か国に拠点を置く90名のスタッフを通じて、抗菌薬耐性、気候変動など世界的課題への取り組みを支援する。

ニュートン・ファンドへの投資額を2021年までに年額1億5,000万ポンドに倍増する。それにより2014~2021年の英国の投資総額は7億3,500万ポンドとなる。これは、将来科学・イノベーションを主導すると目される発展途上国によるマッチング投資である。

ニュートン・ファンドは開始以来、持続可能な食料生産、都市化、抗菌薬耐性などの開発課題に関する研究プロジェクト420件以上に対し助成ファンディングを行ってきた。最初の2年間で1,000件以上のフェローシップ等の助成が実施され、英国と相手国との間で約1,750名の研究者が連携した。

来年から新たに100万ポンドの「ニュートン賞」を創設して、優秀な科学・イノベーション・プロジェクトを毎年助成する。当該プロジェクトの内容は、ニュートン・ファンド相手国の経済発展と社会福祉を推進する、あるいは世界中の貧しい人々が抱える問題に対処するものとなる。

[DW編集局]