[本文]
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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 大統領府
- 元記事公開日:
- 2016/10/12
- 抄訳記事公開日:
- 2016/10/20
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AIの未来に関する報告書
The Administration’s Report on the Future of Artificial Intelligence
- 本文:
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2016年10月12日付のホワイトハウスの報道発表によれば、政府は人工知能(AI)に関してそれがもたらすチャンス、留意すべき事項、挑戦課題に焦点を当てた新規報告書を公表した。報道発表の概要は以下のとおりである。
今後AIがますます大きな役割を果たす未来に向けて、米国を準備させるべく、ホワイトハウスは10月12日、「人工知能(AI)の将来に備える」と題する報告書を公表した。本報告書ではAIの現状、既存または今後期待できる応用領域、AIの進歩が社会や公共政策に及ぼす問題について述べている。報告書はまた今後の具体的施策についても提言している。手引書「人工知能(AI)研究開発国家戦略計画」も公表され、連邦政府がファンディングを行うAI研究開発の戦略計画を明らかにしている。
「人工知能(AI)の将来に備える」(https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/whitehouse_files/microsites/ostp/NSTC/preparing_for_the_future_of_ai.pdf)ではAIがもたらす政策機会をいくつか詳述している。例えば、社会的利益の増進と公共事業の改善に本技術を活用する方法、公衆の安全を確保しつつイノベーションを促進する方法で(自動運転車などの)AI技術に影響を及ぼす規制を適用する方法、AI応用の公明性、安全性、統治可能性を確保する方法、有能かつ多様なAI人材の育成方法などである。本報告書に盛られた23項目の提言は次のとおりである。
1) 官民の研究機関は、社会に利益をもたらす方法で、AIおよび機械学習の責任ある活用の是非および方法を検討すること
2) 連邦政府各省庁はAIにおけるオープン訓練データおよびオープンデータ規格を優先課題とすること
3) 連邦政府は、主要省庁が各々の任務においてAIを利用できるように能力を向上させる方法について調査研究すること
4) NTSC MLAI(機械学習・AI)小委員会は政府全体のAI実践者を対象とする実践コミュニティを形成すること
5) 各省庁はAI使用可能製品の規制方針策定時に、該当する上級者の技術的助言を活用すること
6) 各省庁は配置要員を全面的に活用し、技術の現状についてより多様な見方のできる連邦職員を育成する場合は専門家の採用などで対処すること
7) 運輸省(DOT)は、安全性、研究、その他の目的のデータの共有を拡大する方法について、産業界および研究者と共同で検討すること
8) 米国政府は、高度に拡張可能で無人・有人のいずれの航空機にも完全に対応できる先進・自動の航空トラフィック管理システムの開発・実装に投資すること
9) DOTは、完全自動運転車およびUAS(ドローン)を輸送システムに安全に組み込む目的で、発展的な規制枠組みを引き続き展開すること
10) NTSC MLAI小委員会は、AIにおける開発状況を監視し、目標達成状況等のAIの現状について定期的に政府上層部に報告すること
11) 政府は、外国におけるAIの現状(目標達成状況等)を監視すること
12) 産業界は、目標の早期達成の可能性など産業界におけるAIの全般的進捗状況について常に最新の情報を政府に提供すべく、政府と協力すること
13) 連邦政府は、基礎的・長期的AI研究を重視すること
14) NTSCのMLAIおよびNITRD(ネットワーキング・情報技術研究開発)小委員会は、NTSCの科学・技術・工学・教育委員会(CoSTEM)と連携して、AI研究者、専門家、利用者など人材の幅、資質、多様性を適切に拡大できるような施策を展開する目的で、AI人材供給路に関する調査を開始すること
15) 大統領行政府は、米国雇用市場に対するAI・自動化の影響をさらに調査し、政策対応提言の骨子を示すべく、本年末までに追加の報告書を発表すること
16) 個人に関する重大な判断で判断支援に資する目的でAIを基盤とするシステムを活用する連邦省庁は、証拠ベースの検査・検証に基づいて、このようなシステムの有効性・公平性を確保すべく、特別の注意を払うこと
17) 個人に関わる重大な判断にAIベースのシステムの活用を支援して州政府や地方自治体を助成する連邦省庁は、連邦助成金で購入されるAIベースの製品やサービスが十分に明白な形で成果を生み、有効性と公正性が裏付けされていることを確実にすべく、助成の条件を吟味すること
18) 学校や大学は、AI、機械学習、コンピュータ科学、データ科学に関するカリキュラムの一部として、倫理およびセキュリティ、プライバシー、安全性に関連するテーマを含めること
19) AI専門家、安全性専門家およびそれら専門の学協会は協力して、AI安全工学の成熟に向けた進歩を継続すること
20) 米国政府は、AI関連の国際的取り組みに関して政府全体の戦略を策定し、国際的取り組みと監視を必要とするAIの主題領域のリストを作成すること
21) 米国政府は、AI研究開発に関する情報交換と協力促進を目的として、外国政府、国際機関、産業界、および学術界等の主要な国際的関係機関との取り組みを深化させること
22) 各省庁の計画や戦略では、サイバー・セキュリティに対するAIの影響、AIに対するサイバー・セキュリティの影響を考慮すること
23) 米国政府は、国際的な人道法に則り、無人または半無人兵器に関して政府全体で一本化した方針の策定を完結させることまた「人工知能(AI)研究開発国家戦略計画」(https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/whitehouse_files/microsites/ostp/NSTC/national_ai_rd_strategic_plan.pdf)には次の7項目の戦略が示されている。
・AI研究に対する長期的投資の実施
・人間-AI共同作業の効果的方法の開発
・AIに関する倫理的、法的、社会的関与の理解と対処
・AIシステムの安全性とセキュリティの確保
・公開の共有データセットおよびAIの訓練・試験向け環境の開発
・規格とベンチマークによるAI技術の測定と評価
・AI研究開発要員の国家的必要性の理解増進 [DW編集局+JSTワシントン事務所]