[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
財務省
元記事公開日:
2016/11/23
抄訳記事公開日:
2016/11/28

2016年秋の予算編成方針(Autumn Statement 2016):フィリップ・ハモンド財務大臣の演説

Autumn Statement 2016

本文:

財務省は2016年11月23日にフィリップ・ハモンド財務大臣が議会で行った2016年秋の予算編成方針(Autumn Statement 2016)の全容を同日付で公表した。公表されたポリシー・ペーパーから科学技術・イノベーションに関わる内容を抜粋要約して以下に記す。

英国は今後短期的にはEU離脱という不確実な時期を迎えることになるが、今回の予算編成方針ではこの移行期の経済を支える政策を明らかにしている。近日中に発表される産業戦略に沿って、生産性の向上、そして究極的には生活水準の向上を目指す投資を優先させる。

● 生産性の向上策全般について

新設の生産性投資国家基金(National Productivity Investment Fund: NPIF)により、2017-18年度から2021-22年度にかけての高価値投資に230億ポンドを追加する。政府によるこの支出の対象は生産性の向上に不可欠の領域で、住宅供給、研究開発、経済インフラである。NPIFはこれらの領域に2017-18年度から2021-22年度の間で総額1,700億ポンドを支出するが、これは2021-22年度にはGDPの1.7%に達する。この新規支出には次のものがある。

・新規住宅の建設支援に72億ポンド。これには住宅供給協会(Housing Associations)による支出が含まれる。
・科学・イノベーションにおいて英国の世界における指導的地位の強化に47億ポンド。
・渋滞を解消して未来に適応した英国の輸送ネットワークの確保に26億ポンド。
・全面的なファイバー接続および次世代5G通信の本格市場展開の支援に7億ポンド。

政府は”British Business Bank”からの4億ポンドと合わせた民間投資を奨励して、スケールアップを計画しているイノベーション企業に対する10億ポンドの新規投資を可能にし、”UK Export Finance”を通じて輸出業者への支援能力を倍増する。

政府は英国全土での生産性向上を図る。政府は「北部パワーハウス戦略」を間もなく発表し、地方成長基金(Local Growth Fund)を通じて地域に対して180億ポンドのファンディングを割り当て、将来の権限移譲に関してミッドランド西部およびロンドンとの協議を継続し、スコットランドおよびウェールズにおける都市協定を継続する。

● 研究開発について

研究開発は経済成長の主要な牽引役であり、政府の産業戦略の重要な部分を成す。英国の生産性向上を支援するべく、NPIFは研究開発ファンディングに対して2020-21年度までに47億ポンドを追加投入する。この今国会会期末までの年あたり20億ポンドの追加は、政府の研究開発支出全体を約20%増加させることになる。
NPIF経由の政府ファンディングには次のものがある。

・産業戦略チャレンジ基金:企業と英国の科学基盤との間の協力を支援する分野横断的な新規ファンディング。英国の研究者が取り組むべき特定可能な課題を設定する。基金はInnovate UKと各研究会議が運用する。米国の国防高等研究計画局(DARPA)プログラムをモデルとしたこのチャレンジ基金は、広範囲の技術を対象として(科学的)根拠に基づくプロセスにより決定される。
・イノベーション・応用科学・研究:世界を主導する英国の研究基盤のさらなる支援により、その能力をフルに発揮させるべく、研究能力・企業イノベーションの強化を図る追加的ファンディング。設置予定のUKRI(UK Research and Innovation)が国のエクセレンス基準に基づくファンディングを行うほか、Innovate UKを通じた助成金も実質的に増額されることになる。

研究開発の税環境:研究開発を行う場所として英国をより競争力のある場所とするべく、政府は研究開発の税環境を見直し、「基準以上の」研究開発費税額控除を導入する方法を検討する。

技術移転と研究開発施設:政府は10月に生物医学カタリストの拡大・強化に2020-21年度まで1億ポンドの追加ファンディングを約束している。この基金はInnovate UKに割り当てられる。1億ポンドのファンディングはまた、技術移転や企業との共同研究における大学の協力を奨励する目的でも2020-21年度まで提供される。

科学・イノベーション監査:政府は科学・イノベーション監査の第2波に8つの領域を選択した。イングランド北部のバイオエコノミー、イングランド東部、イノベーションの南部、グラスゴーの経済的リーダーシップ、リーズ市街地域、リバプール市街地域、洋上エネルギー・コンソーシアム、オクスフォードシャーの変革技術の8領域である。

●デジタル通信について

全面的なファイバー接続と次世代5G通信の本格市場展開の支援を目標として、政府はNPIF経由の7億4,000万ポンドを含む10億ポンド強を2020-21年度までに投資する。これにより英国全土の家庭と企業向けに、より高速でより信頼性の高いブロードバンドの提供が可能となり、次世代のモバイル接続が促進され、英国がモノのインターネット開発の最前線の位置を保持できる。

[DW編集局]