[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
首相官邸
元記事公開日:
2016/11/21
抄訳記事公開日:
2017/01/26

英国産業連盟(CBI)年次総会におけるメイ首相の講演

CBI annual conference 2016: Prime Minister's speech

本文:

首相官邸の2016年11月21日付標記発表によると、テレサ・メイ首相は同日英国産業連盟(CBI)の2016年年次総会において講演し、新産業戦略を含む英国企業に関するビジョンを明らかにした。概要は以下のとおり。

● 現代に即した産業戦略

EU離脱の今後の交渉が重要であることはもちろんだが、6月23日の国民投票で国民が送ったメッセージのより広範な視点を見失ってはならない。すべての者が繁栄を共有しすべての者に真のチャンスがある、より豊かでより平等な国の建設に、この機会を活用する必要がある。

すでに世界有数のイノベーション企業のいくつかが、英国の長期的な将来に信頼を置いた大規模な投資表明をしている。日産は北東部の工場で2つの次世代モデルの製造を決めており、これにより7,000人の雇用が確保される。ソフトバンクは英国の将来に240億ポンドという記録的な投資をする。Jaguar Land Roverは5億ポンドを投資して拡張し3,000人を雇用する。ホンダは2億ポンドの投資、GlaxoSmithKlineは2億7,500万ポンドの投資、Appleは本部の新設に投資、Googleは10億ポンドの投資と3,000人の新規雇用を見込んでいる。またFacebookは2017年末までに英国の従業員数を50%増やすことを発表した。

政府にできることは企業による英国への投資を促進することのほか、このような投資が国内の各所で国民の利益になるようにすることである。首相としての最初の施策として、現代に即した産業戦略の策定に具体的な責任を有する省(ビジネス・エネルギー・産業戦略省)を新設したのはそのためである。

英国は自動車、航空、ライフサイエンスなどの分野で強みを有し、またロボティクス、AI、量子コンピューティングなどの新しい分野でも精彩を放っている。大学や研究の生産性を見ても世界のトップレベルの国力があることは明らかであるが、一部に弱点があることも率直に認める必要がある。

米国を除けば英国は他のどの国よりも多数のノーベル賞受賞者を輩出しているが、英国で開発された偉大なアイデアは結果として他国で商業化されている。英国は世界の金融資本の本拠地の一つであるが、急成長する企業が必要とする長期の持続的な資本投資を受けられない場合が非常に多い。そのため、こうした企業は必要な資金支援を得るには海外投資家に頼らざるを得ない。そのほかにもいくつか弱点が認められる。

新しい産業戦略はこのような長期的構造的課題への対処を目的とする。それは業績不振の産業のてこ入れや成功した産業を持ち上げるのではなく、成功産業が出現し成長できる条件を創出することである。そのような企業の成功を常時支援することで、英国の長期的な未来への投資を促進することである。それによって英国の各コミュニティ、各地域で雇用と経済成長の実現を図ることである。

● 研究開発

英国が科学者、イノベーター、技術投資家にとってのグローバルな活躍の場となることを目指している。そのために英国は最も優れた人材を引き続き歓迎するが、これは、移民受け入れのレベルを全般的に持続可能なレベルにもっていき、この制度に対する国民の信頼を維持することで、実現可能である。

現在英国は人類の発見における最も刺激的ないくつかの分野を主導する企業や研究者を擁している。このような企業や研究者を支援して、研究の力を商業上の成功に転換する必要がある。つまり研究開発への投資額を増やすだけでなく、その投資を賢く行うことである。英国に長期的な利益をもたらす可能性のある技術やセクターを支援することである。

先の国会では基礎科学の予算を堅持し、秋の予算編成方針では政府の研究開発投資の実質増(先端科学技術に年20億ポンドの投資増)を約束する。新規の「産業戦略チャレンジ基金」では投資の一部を多数の優先技術の研究開発(特に商業化に関する英国の歴史的弱点を補い、世界トップクラスの研究を長期的な成功に転換する研究開発)に向ける。また税制を通じたイノベーション企業の支援も検討する。

[DW編集局]