[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2017/01/05
抄訳記事公開日:
2017/02/23

公衆衛生リスクの評価方法改善のための科学的データの活用

New Report Calls for Use of Emerging Scientific Data to Better Assess Public Health Risks

本文:

2017年1月5日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記に関する発表の概要は以下のとおりである。

近年の科学技術の進歩により、化学物質による公衆衛生上のリスク評価を改善できる可能性が生じているが、いかに新たなツールや手法をリスク評価に組み入れるかが課題となっている。このためNASEMは、新たな報告書において、最新の科学を活用した疾病等につながる多くの要因を評価するアプローチを推奨し、疾病原因の複雑さを踏まえたリスク評価の新たな方向性を提示した。本報告書は、先に公表した2報告書「21世紀の毒性試験(Toxicity Testing in the 21st Century)」、「21世紀の暴露科学(Exposure Science in the 21st Century)」の成果に基づくものであり、暴露科学、毒物学、および、疫学の最新ツールの有益性を考慮に入れて取りまとめられている。

最先端の科学的手法をリスク評価において様々な形で活用している4機関 (米国環境保護庁、米国食品医薬品局、国立環境衛生研究所、国立先進トランスレーショナル科学センター)により、本報告にかかる調査が要請された。この要請を受けて、組成された委員会が暴露科学、毒物学、および、疫学における多くの新たなツールの利点を考慮する調査を実施し、本報告書を取りまとめた。本報告書は公衆衛生上の課題解決策を見出す必要がある意思決定者に、有益な情報を提供すると考えられる。

本報告書では、化学物質評価、有害廃棄物処分場などの施設におけるリスク評価、新規化学分子の評価などにおいて、新たなツールによってリスク評価が改善される可能性に述べている。本報告書には、既知もしくは有害な可能性のある物質のリスク評価をする際に、様々な分野の新しいツールを組み込む現実的な手法に基づく幾つかの事例研究が含まれている。

例えば、大気汚染と肺がんとの間に強い因果関係があるが、大気汚染のどの成分が発がん性であるか、様々な成分が相互作用する場合、どのような影響が低暴露で起こるのか、そして、どのような特性の群の人々が癌のリスクが高いのかについては分かっていない。これに対して、本報告書では、毒物学および暴露科学、特にオミックス科学の進展が、いかに有害影響の特徴を同定し、様々な物質への暴露の測定を改善し、そして危険に晒される群の人々を特定できるかについて述べている。また、小児の神経発達問題など、大気汚染によって引き起こされる健康上の不確定性についても調査している。

また、本報告書の調査委員会は、これらの分野における多様で複雑で大規模なデータセットの分析、解釈、統合に関する技術の発展が著しく、それに対してアプローチの開発が追い付いていないことを指摘し、様々な状況での意思決定とデータ可用性を反映した事例研究の開発、多様な学問領域にまたがるパネルによる事例研究の評価、エビデンスの評価と意思決定の形式化など、新興技術からの知見の活用を促進するためのアジェンダを提案している。さらに、本報告書では、得られたリスク評価結果が社会に適切に受けいれられるように、利用したリスク評価手法の強みと限界を透明かつ理解可能な方法で、伝えることが必要であることを強調している。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]