[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2017/03/09
抄訳記事公開日:
2017/04/27

多様で大量のバイオテクノロジー製品の市場投入に備えて連邦規制当局の備えが必要

Federal Regulatory Agencies Need to Prepare for Greater Quantity and Range of Biotechnology Products

本文:

米国の科学・工学・医学アカデミーの2017年3月9日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。

米国の科学・工学・医学アカデミーからの新しい報告書によると、今後5〜10年で大量のバイオテクノロジー製品の投入が予想されており、新製品の数や多様性が米国の規制システムを圧倒する可能性がある。 米国環境保護庁(EPA)、米国食品医薬品局(FDA)、米国農務省(USDA)、およびその他のバイオテクノロジー製品の規制に関与する機関は、成長が予想される重要分野における科学的能力、ツール、専門知識を高めるべきだと、本調査を行った委員会が報告書にとりまとめている。

米国のバイオテクノロジー市場は急速に成長しており、製品の規模、範囲、複雑さが増大している。バイオテクノロジーで導入される形質の種類も増え、より多くの種類の生物が設計される可能性があると報告書は指摘している。将来的にCRISPRなどのゲノム編集技術を使用して、農作物の改変などが行われる可能性が高い。また、人間の管理が及ばない環境に生息するように設計された微生物、植物、および昆虫等の、全く新しい製品の登場が期待されている。そして、ほとんど例外なくこれらの製品は現在の規制制度によって評価されていない。

EPA、FDA、USDAおよび他の機関で利用可能な現在の職員のレベル、専門知識、およびリソースは、将来予想されるバイオテクノロジー製品の範囲および規模に対処するには不十分である可能性がある。規制当局には、発展しつつある主要分野における科学的能力、ツール、専門知識を開発し、維持することが求められる。例えば、意図された遺伝的変化と生物形質との関係の理解、標的および非標的生物に対する遺伝的変化の意図しない影響、生態系応答の予測およびモニタリング、ならびにバイオテクノロジーの経済・社会的費用および利益の定量化を行う必要がある。

規制当局が直面する課題の1つは、予想される多様なバイオテクノロジー製品を規制するために既存の法令の下で、どう法を適用するかである。バイオテクノロジー規制のための調整フレームワークと呼ばれる現在の法令・規制の集まりは、幅広いバイオテクノロジー製品をカバーするかなりの柔軟性を有するように見えるが、規制当局間のギャップや重複を残す可能性がある。

連邦政府は、新しいバイオテクノロジー製品の進展を注視し、新規で複雑なリスク分析の必要とする製品を特定し、優先順位を付ける戦略を策定すべきである。また、連邦政府は規制科学研究を進めるために関連資金の調達に努めるべきである。この目的のために、NSF(国立科学財団)、DOD(米国国防総省)、DOE(米国エネルギー省)、NIST(国立標準技術研究所)、およびその他のバイオテクノロジー研究に資金を提供する機関は、規制科学への投資を増やすべきである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]