[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
下院科学・宇宙・技術委員会
元記事公開日:
2017/03/10
抄訳記事公開日:
2017/05/02

米下院科学・宇宙・技術委員会が2018年度予算案に対する見解を公表

Views and Estimates of the Committee on Science, Space, and Technology U.S. House of Representatives for FY2018

本文:

2017年3月10日付で米下院科学・宇宙・技術委員会は、2018年度予算案について同委員会の権限内の事項に関する見解と評価を、下院予算委員会宛に提出した文書で明らかにした。同委員会の見解は対象となる機関ごとに示されている。主要な機関について以下に抜粋して記す。

●国立科学財団(NSF)

・数学・物理科学局、コンピュータ・情報科学・工学局、生物科学局、工学局に配賦される研究ファンディングの70%を使って、NSFの研究ファンディングは局レベルで割り当てられるよう、当委員会は要求する。
・NSFおよびすべての省庁を通じて実行される連邦政府のファンディングによる研究は国益になることを当委員会は保証する。
・前回の議会で大統領は2015年の「STEM教育法」に署名した。当委員会はこの進展をさらに進めて、連邦政府全体のSTEM教育活動統括向上を図る作業を継続し、米国の労働力がSTEM分野の専門家で構成できるようにする。

●国立標準・技術研究所(NIST)

・基盤技術のイノベーションへの移行を目的として、NISTの科学技術研究・サービス予算やNISTの施設予算による主要な研究ファンディングの増強を図る。
・当委員会は、NISTが、サイバーセキュリティの知識、科学技術の基準設定、連邦省庁のサイバーセキュリティ即応能力の調査分析において、グローバル・リーダーとしての地位を維持確保する。また、連邦政府各省庁のコンプライアンスの遵守レベルを吟味・評価する。この目標に対してのファンディングは満額実施される必要がある。

●エネルギー省(DOE)

・当委員会は、DOE研究・イノベーション法に準拠してDOEの国立研究所では基礎的な科学研究を優先させるよう求める。また全50州にいる研究者がスーパーコンピュータや高光度光源など世界トップクラスの利用施設にアクセスできるよう求める。
・研究開発(Function 250)におけるDOE科学局予算のファンディングレベルの維持に加えて、基礎研究プログラムによるDOE科学局国立研究所ファンディングの配賦を行う。
・エネルギー効率・再生可能エネルギー研究開発およびARPA-Eのファンディング(Function 270)は7億5,000万ドル以上削減する。

●海洋大気局(NOAA)

・NOAAの研究で優先度の高い公共の安全に関する気象研究に1億2,500万ドルのファンディングを行う。人命の救助と財産の保護こそNOAAの主要なミッションでなければならない。
・NOAAの商用気象データパイロット・プロジェクト向けの600万ドルは、NOAAの調達・購入・建設予算での既存ファンディングで賄う。
・2017年の「気象研究・予測イノベーション法」に基づく観測システムシミュレーション実験や次世代コンピューティング・モデリング機能での利用に必要な、気象観測データの向上を図る。またNOAAの海洋・大気研究局に新規2,000万ドルの技術移転イニシアティブが創設される。
・NOAAの気候変動プログラムおよび政府の大規模衛星システムのコスト削減により、数億ドルの節約が可能になる。

●米航空宇宙局(NASA)

・当委員会は、商業的なインセンティブやアイデアによる起業家精神を備えた宇宙科学プログラムの再活性化を通して、新しい未開拓の分野や世界を探査する米国の開拓者精神を再燃させる。
・当委員会は、議会承認法案に示された政策条項、および議会提案のNASAの2017年度のファンディングレベル(195億ドル)の完全実施を推進する。
・NASAの地球科学ファンディングを14億5,000万ドルに削減することにより、NASAへの全般的な投資レベルは維持する。その結果生じる4億7,100万ドルを惑星科学、天体物理学、太陽系物理学、オリオン宇宙探査多目的クルー輸送機、商用クルー・プログラム、探査研究開発に再配賦する。

●環境保護庁(EPA)

削減対象のEPAの科学技術予算によるファンディングは、リスク、暴露、有害性評価の支援に値するすべての科学技術情報およびデータ、規準文書、規格、制限、規制、規制効果分析、EPAによる指針等の公開をEPA長官が要求した場合にのみ、適用される。

●米国の地球規模変動研究プログラム(USGCRP)

USGCRPは気候変動研究に20億ドル強を支出する省庁間予算であるが、NASA、NSF、NOAA、NIST、DOE、EPA等が関与して重複が多い。この財政上の無責任さを考慮すると、USGCRPの一環をなすいかなるファンディングも、重複や無駄がないと政府が認めた場合のみ有効とすべきである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]