[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/04/10
抄訳記事公開日:
2017/06/09

EU拡大が国際共同研究の増加となってはいない

AAAS: EU Expansion did not Increase Cross-Border Research, Study Finds

本文:

2017年4月10日付の米国科学振興協会(AAAS)による標記記事の概要は以下のとおりである。

サイエンスアドバンス4月12日号によれば、2004年および2007年のEU拡大において、新規加盟国と既存加盟国間の共同研究協力は増加していない。代わりに、新規加盟国からドイツやイギリスといった既存加盟国に研究者が移動したため、新旧加盟国間の国境を越えた研究者のつながりが排除されてしまった。

「2004年および2007年のEU拡大はまれな政治的事象であり、科学者にとっては複雑な社会システムを動かすメカニズムを研究する上で絶好の社会実験である。この拡大を利用し、我々は学術出版物における国際協力と研究者の移動の相互作用を研究した。欧州内での高技能労働者の突然の移動は国際協力の割合を低下させ、結果としてEU拡大は意図せぬEU「崩壊」を招いた。」とカリフォルニア大学マーセド校の助教授アレクサンダー・ピーターセン(Alexander Petersen)氏は述べた。

この予期せぬ発見は、EUの科学資源の統合を目指した研究プログラムであるEuropean Research Area(ERA)の根底にある主張、すなわち、国境の排除によりEUの国際的な科学的競争力を強化するという主張を覆すものである。

理論的には、新規加盟国と既存加盟国間での協力機会の数は、EU拡大とともに増加したはずである。世界銀行のデータによると、2004年のEU拡大は研究開発に携わるEU研究者の数を11%増加させている。しかし、おそらく、2004および2007年の新規EU加盟国から研究者が比較的急速に既存加盟国に移動したため、協力の機会が低下したのである。西欧の既存研究ハブへの研究者の移動が、ERAネットワークを弱体化させ、新規EU加盟国との協力を妨げているという結果が見出されている。

ピーターセンらの調査の1つの肯定的な発見は、西欧から東欧への研究者の移動が以前より増加したことである。ピーターセンは、「この西から東への移動は、欧州内の頭脳循環の肯定的シグナルである。」と述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]