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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2017/04/11
- 抄訳記事公開日:
- 2017/06/15
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研究公正のための新たな諮問委員会の設立を提言
- 本文:
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2017年4月11日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の報告書は研究公正のための様々な提言、助言を行っている。その内容は次のとおりである。
研究者、研究機関、出版社、研究助成機関、学会、政府機関、これらすべてのステークホールダーは研究の公正さを守るため、現行の業務や政策を改善すべきである。研究を再現するのに必要なデータを整え、オーサーシップ基準を明確にし、内部告発者を保護するべきである。とりわけ、肯定的なものであれ、否定的なものであれ、研究成果を報告することが大切である。
研究の公正さの確保には個人の研究者というよりは研究機関および環境による役割が大切であると強調し、独立した非営利の研究公正諮問委員会 (RIAB) の設立を推奨する。RIABは研究界のあらゆるステークホールダーと協同して、研究不正や有害な慣習に対処あるいは最小限にするための専門知識やアプローチに関する情報を分かち合う場となる。
分野によっては公表された研究結果の相当数が再現不可能だということを裏付ける証拠が増えてきている。これは複雑な現象で、多くは謎である。再現不可能なのは、ある程度原因不明の変数やエラーによるものだ、というのは研究にはありがちなことであるが、データの改ざんや有害な研究慣行(統計を不適切に使うとか、事後に仮説を以前に得たデータに合わせようとする)は明らかに再現を不可能にする。
さらに、新種の有害な研究慣行が現れてきている。いわゆるハゲタカ出版がこれにあたり、論文の査読やクオリティ・コントロールはごくわずかか又は全くなされず、一方で著者に法外な料金(掲載料)を要求している。しかし、このようなことが増えているのは必ずしも研究不正が増えているということを示すものではない。なぜなら、研究関連のコミュニティーがもっと厳しい目をむければ、避けることができるかもしれないからである。
これまでは「疑問の余地がある」と分類されてきた多くの研究慣行(例えば、改ざんには至らないまでも、誤った統計の使い方や研究データの保持の失敗)なども「有害」な研究慣行と分類すべきである。有害な研究慣行は個人の研究者の行動のみならず、研究機関やジャーナルによる無責任で不正な行動によるものと解釈すべきである。
研究機関は研究公正を育む上で、中心的役割を果たすため、研究行動については、最高の基準を保たなければならない。研究公正を育み、最善の慣行を順守するよう奨励するような研究文化を構築し、維持していくことに加えて、研究環境の公正さをモニターすることも含まれる。とりわけ、上級幹部が積極的に主導すべきである。
さらに、研究機関や政府機関は良心的な内部告発者(研究公正を懸念している人)が守られ、その懸念に対して公正に、徹底的に、タイムリーに対処されるようにしなければならない。
政府助成機関や他の研究支援機関は公表された研究成果を再現するのに必要なデータやコードの長期保存、アーカイビング、そしてアクセスを可能にするような十分な資金を用意するべきである。
また、例え否定的な発見であっても、研究者は常に統計的な検証結果を公開すべきである。科学出版物は否定的な結果を表明することを消極的にとらえるため、否定的な結果についての出版は減少気味である。しかし、公表することにより、それらを繰り返す必要がなくなり、研究時間の節約になる。また、そのことが既存のパラダイムに疑問を引き起こし、最終的に画期的な新しい発見にもつながる。研究支援機関、研究機関、ジャーナルはこのようなレベルの透明性を支持し奨励すべきである。
科学学会やジャーナルは、多大な知的貢献をしたのは著作者であることを認識し、規律によるオーサーシップを設けるべきである。
以上を基に、研究公正を育むには、前述した、非営利でどこからも独立したResearch Integrity Advisory Board(RIAB)を設立すべきである。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]