[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2017/04/21
抄訳記事公開日:
2017/06/21

世界最強の無線トラフィック競争が開幕

World’s Most Powerful Emulator of Radio-Signal Traffic Opens for Business

本文:

4月21日付け米国国防高等研究計画局(DARPA)の標記記事の概要は以下のとおりである。

4月21日にコロッセウムが大々的に幕開けした。古代ローマのコロッセウムの話ではなく、DARPAのコロッセウム、目には見えない電磁界の次世代電子エミュレータのことである。ジョンズ・ホプキンズ大学・応用物理学ラボ(APL)にある、たった30×20フィート(9×6メートル)の床面積の部屋に設置されているこのコロッセウムは、はるかに大きく、極めて重要なワイヤレスの世界を作り出すことができる。このDARPAの3年プログラム、スペクトル・コラボ・チャレンジ(SC2)では、計画通りに行けば、375万ドル(4億3千万円)の賞金を狙っている研究者がこのコロッセウムを使うことになる。それが今日始めて、アクセス可能となった。これは世界で他に類を見ないテストベッドで、軍事用・民間用の両面で電磁スペクトルを利用できる画期的なパラダイムを作り出すこととなる。

これまでのワイヤレス・コミュニケーションはある仕様(スペック)に基づいたものであり、すでにプログラムされた環境でのみ可能なものだった。そのスペックは何年もかかって、築き上げられたもので、無線システムがどのようにすれば動き、他の無線とどのように交信するか、というものだった。しかし、SC2は全く新しい無線システムで、お互いに一緒に作動するようにデザインされていない一群の無線機器がお互いにどのようにスペクトル容量を最適化するかをリアルタイムで人口知能を使って学ぶものである。

DARPAのコロッセウムは、一見何の変哲もないラックである。が、無数のワイヤレス・コミュニケーション媒体(携帯電話、軍用無線、IoT、その他多数)にとって、数万もの起こりうるインタラクションを学習できる革新的なテストベッドとなる。無線が、広場であれ、密集都市であれ、郊外のショッピングモールであれ、砂漠であれ、その他考えられるどんな場所でも、可能になるのである。

APLの研究者たちにより、コロッセウムには128の、アンテナが2つあるソフトウェア無線(SDR)(National Instruments 製)ユニットが組み立てられている。今回、このような強力なワイヤレス・テストベッドをクラウド環境に置くのは史上初の試みであるが、さらに、驚異的なのは、一度研究者たちがコロッセウムにアクセスできるようになれば、人口知能によるワイヤレス・コミュニケーションの諸問題を解決する方法について、急速な進歩が見られるようになることである。

このプログラムを数字で表せば、コロッセウムのテストベッドは256×256 のRFチャンネル・エミュレータで、つまり、各々のチャンネルは100MHzの周波数帯域を持っているかのように働く。また、各々のチャンネルの送受信周波数は10MHzと6GHzの間で同調可能である。コロッセウムを通過していくRFデータの量は毎秒52テラバイトで、米国国会図書館所蔵の印字された情報量のすべてをはるかに上回ることとなる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]