[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2017/04/26
抄訳記事公開日:
2017/06/28

末梢神経刺激による認知能力訓練の加速プログラム

TNT Researchers Set Out to Advance Pace and Effectiveness of Cognitive Skills Training

本文:

4月26日付米国国防高等研究計画局(DARPA)の標記記事の概要は以下のとおりである。

1年ほど前の2016年3月に米国DARPAは「標的型神経可塑性訓練」プログラム(TNT)を開始すると発表し、今、その研究が始まった。それは、脳の領域だけに存在すると考えられてきた学習能力を向上させる機能を、人体の末梢神経によって獲得する取り組みである。TNTとは、シナプシスの可塑性の活性化を目的とした、最適で安全な神経の刺激方法を特定するために幅広く研究するものである。シナプシスの可塑性は脳の中で自然に起こるもので、「学習」に必須のものである。これには、2つのニューロンをつなぐ結合を強化したり、弱くしたりすることも含まれる。そして、究極の目的はこれらの方法を認知能力の習得を加速する強化トレーニングに取り込むことである。

DARPAはこの研究を自身の国防というミッションに組み込みたいと考える。この研究は4年計画で、下記の7つの研究機関で、8プロジェクトが立ち上がっている。期間の前半は神経刺激が脳の可塑性に及ぼす影響に関する神経メカニズムについて様々な角度から研究し、後半はその研究結果を実際に様々なトレーニングで使用して、学習能力向上測定に使ってみることになっている。

アリゾナ州立大学では米国陸軍研究所と共同研究をし、脳の知覚、視覚システムのシナプシス可塑性を促進するために、三叉神経刺激の研究に焦点を当てる。ジョンズホプキンズ大学では言語習得に関わるシナプシス可塑性の研究。フロリダ大学では迷走神経刺激が脳のどの神経経路を刺激するかを研究。もう一つのフロリダ大学での研究は視覚に焦点を当てた研究を進めている。また、メリーランド大学では迷走神経刺激が外国語習得に及ぼす影響を研究。テキサス大学ダラス校では可塑性を最大にするに最適な刺激パラメータを研究。ウィスコンシン大学では迷走及び三叉神経を刺激することにより脳の神経調節性ニューロンがどのように活動するかを研究。

ライト州立大学では神経可塑性のエピジェニック・マーカーを特定し、迷走神経刺激に対する人間の反応を研究。

従来のニューロ・サイエンス研究は失われた機能を回復することに焦点を当てていた。これに対し、TNTは学習能力を30パーセント向上させることを目的とし、軍事に携わる人間がフルに学習能力を発揮できるようにすることを目指し、軍事訓練の費用と期間の縮小に役立てようとするものである。

このように、TNTは社会的、倫理的問題も含んでおり、上記アリゾナ州立大学を支援して、プロジェクト初年度に倫理ワークショップを開催する。科学者、生物倫理学者、規制機関、軍事専門家、などが参加し、兵士の認知能力向上訓練に関する倫理問題について報告書を作成することとなっている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]