[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/05/23
抄訳記事公開日:
2017/07/07

トランプ政権の2018年度科学技術予算案をAAASが分析

First Notes: AAAS Analysis of FY 2018 Science Budget

本文:

2017年5月23日付の米国科学振興協会(AAAS)による標記発表の概要は以下のとおりである。

トランプ政権はこのほど、2018年度予算案(大部分を網羅したもの)を発表した。この提案は科学技術ファンディングに関して史上まれに見る大幅な支出削減になる。以下はAAASが取り急ぎ発表した分析メモである。

●自由裁量支出と研究開発費の全容

ホワイトハウス予算では2018年度の非国防費の大幅削減のほか、その後もさらに(インフレを考慮せずに)年2%以上の削減を維持するとしている。そうすると2027年度の非国防自由裁量予算は(購買力を考慮しても)2017年度比41.9%減になる。

国防総省(DOD)と国家核安全保障局(NNSA)以外の科学技術各省庁および各プログラムは非国防予算に組み込まれているので、上記の削減は研究開発ファンディングにとって重大問題である。一般的にほとんどのプログラムがこの予算に合わせて進められている。予算が削減されれば、ほとんどの省庁が程度の差があれ、後退し、その逆もまたしかりである。非国防予算に史上まれに見る低レベルの提案がなされていることで、NIHのようなよく知られた科学プログラムでさえ相当な影響を受けることはほぼ間違いない。

将来のファンディンングの問題はさておき、トランプ政権は2018年度の研究開発ファンディング(とりわけ基礎・応用研究に関する部分)に対して、かなり大幅な削減を提案している。AAASの現時点の予測では、ホワイトハウスは2018年度に研究ファンディング全体で16.8%(126億ドル)を削減する。研究ファンディングが大幅削減されれば、連邦研究は対GDP比で0.31%に落ち込むことになり、過去40年で最低となる。

●省庁ごとの特筆すべき事項

・国立衛生研究所(NIH)は包括ファンディングのレベルより21.5%の削減が予定されている。ホワイトハウスはフォガティ国際センターを廃止し、医療研究品質庁(AHRQ)を新たな研究機関としてNIHに統合しようとしている。政府は省庁全体に統一間接経費レートを導入しようとしているが、詳細は未定(ホワイトハウスの文書によると統一レートは10%)。

・予想されたことではあるが、エネルギー省(DOE)の科学技術プログラムのほとんどが程度の差こそあれ削減される。削減幅が最も大きいのは、再生可能エネルギーとエネルギー効率、炭素の固定・貯留技術、科学局内の気候関連研究などである。廃止対象のプログラムには、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)、複数のエネルギー・イノベーション・ハブ、DOEのクリーン・エネルギー製造技術研究機関などがある。

・国防支出の全般的な増加にもかかわらず、国防総省(DOD)の科学技術プログラムは一般的にその恩恵を受けていない。DODの基礎研究は2.1%削減される。軍事部門の中でも陸軍省の研究・先進技術プログラムは22.4%削減される。その一方で国防高等研究計画局(DARPA)は9.7%増が予定されている。

・国立科学財団(NSF)は11%削減されて2018年度は総額66億ドルになる。実質予算で2002年度のレベルに下げられる。NSFの6大研究局はすべて、ほぼ同様の削減率になる。

・航空宇宙局(NASA)の科学ミッション局では惑星科学の予算が4.5%増で、これには木星の衛星エウロパ(Europa)に向けたミッションに対する予算1億5,000万ドルが含まれる。一方で、地球科学予算は昨年の認可レベルより9%削減される。SLS(打ち上げロケット)およびオリオン(宇宙船)はいずれも削減対象で、NASAの商用乗員輸送プログラムもファンディング削減の対象である。

・国立標準技術研究所(NIST)はその中核的研究所のプログラムが13%の削減を受ける。サイバーセキュリティ、ナノスケール科学、通信技術、その他基礎研究領域が対象になる。ホリングス製造拡張パートナーシップ(MEP)は廃止対象で、以前に製造業イノベーション全米ネットワーク(NNMI)として知られた米国製造業(Manufacturing USA)イニシアティブは包括予算の認可レベルより1,000万ドル削減の1,500万ドルになる。

・海洋大気局(NOAA)の海洋大気研究局(OAR)は1億6,400万ドル(32%)の大幅減額で、OARの気候研究は昨年の認可レベルより19%の規模縮小になる。国立高等海洋研究所プログラムは廃止され、国立気象局は要求を5.7%カットされる見込みである。静止気象衛星(GOES-R)および共同極軌道衛星システム(JPSS)は打ち上げ準備作業の予定に合わせてファンディングが削減される。一方、PFO(Polar Follow On)予算は半分に削減され、PFOプログラムの計画見直しが開始される。

・環境保護庁(EPA)の科学技術予算は昨年の包括予算の認可レベルより2億6,300万ドル(36.8%)削減される。

・米国地質調査所(USGS)は全体で1億6,300万ドル(15%)の削減を受ける。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]