[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/05/31
抄訳記事公開日:
2017/07/12

米国2018年度予算:製造・農業・気候変動研究の削減

Manufacturing, Agriculture, and Climate Research Among FY18 Reductions

本文:

5月31日付の米国科学振興協会(AAAS)の標記記事によると、トランプ政権は2018年度予算において、国立標準技術研究所(NIST)のラボや産業研究開発プログラム、農務省(USDA)のリサーチ・ファンディング、海洋大気局(NOAA)の気候・環境プログラム等への政府支援を削減するとしており、その概要は以下のとおりである。以下、円ドル換算レートは$/111円。

農務省(USDA)
– 農業研究局(ARS):農務省傘下で研究に携わる機関。2017年度予算比29.2%の削減。ARSの研究に特化した機関においては15.2%、1億7,790万ドル(197億円)の削減。これにより、17の研究所、つまり全研究所の5分の1が閉鎖に追い込まれ、ARSの現行のプロジェクトのいくつかが削減もしくは消滅する。特に生物を原料とする製品やバイオ燃料関連のプログラムは大幅な削減(少なくとも29.5%減)となる見込み。

– 国立食料・農業研究所(NIFA):2017年度予算比8.1%削減。大型の従来からあるプログラムは大筋そのままで保持。例外としてMcIntire-Stennis state forestry プログラム(森林の生産、利用、保護に関する林業研究や将来の林業研究者の育成等を目的とするファンディング)が15%、500万ドル(5億5,500万円)削減される。サステイナブル農業グラントは少なくとも22.8%削減。USDAの外部で行われる研究を支援するプログラムである農業食物研究イニシアチブ(AFRI)は前年比6.8%、3億4,930万ドル(387億7,230万円)の削減。また、小型のバイオマスR&Dイニシアチブは消滅する見込みである。

– 経済研究局(ERS)は昨年比11.6%削減。これには様々な農業データ分析プログラムが含まれる。一方、米国農業統計局(NASS)は昨年度比8.4%増加。その他小さな削減はあるものの、農業調査(Census of Agriculture)が50%強増加したことにより、全体として増加の見込み。

– 森林局森林・放牧地研究ファンディングは10.2%の削減。侵入生物種、大気質研究、上水、資源管理などのプログラムが削減の影響を受ける。

国立標準技術研究所(NIST)
NISTの主な研究ラボは2018年度において、かなりの予算削減となる。特に産業局の予算は、政府案では、ほぼ消滅する見込み。
– 科学技術研究局(STRS)はNISTの主要な7つの研究ラボに出資しているが、昨年比13%、9,000万ドル(99億9,000万円)の削減。要求額を見る限り、NISTの科学関係の人員は10%削減となる。また、多くのファンディング・プログラムも削減見込み。NISTの外部ファンディング・プログラムである火災研究グラントやナノ材料の環境・健康・安全性プログラムなども削減される。

– 産業技術局(ITS)のHollings Manufacturing Extension Partnership(MEP)は消滅の見込み。この消滅により、2,500のパートナーと9,400のクライアント会社に影響がでる。また、以前製造イノベーション全米ネットワーク(NNMI)として知られていた米国製造(Manufacturing USA)プログラムは1,000万ドル(11億1,000万円)削減されて、1,500万ドル(16億6,500万円)となる見込み。一方、NISTの研究施設建設計画はさほど削減の影響は受けない模様で、メリーランドの放射線物理研究棟の改築計画は予定通り継続される見込み。

アメリカ海洋大気局(NOAA)
NOAAの裁量予算要求額は15.9%、9億ドル(999億円)の削減。大幅削減となると思われる項目は次のとおり。
– 海洋大気研究所(OAR):2017年度比31%カット、そのうち、気象研究は19%、気象大気化学研究は25.4%の削減となり、これにより、大気リソース・ラボと無人飛行システムプログラムを閉じる見込み。さらに、共同テクノロジー・トランスファー・プログラムとボルテックス・サウスイースト・プログラムも中止となる模様。OARの海洋、海岸、湖に関するプログラムは昨年度比半分程度になり、シーグラントプログラムは中止となる方向。

– 海洋局(NOS):29の湾岸拠点を繋いで行われていた国の河口研究保全システムの研究に対する政府の支援、2,300万ドル(25億5,300万円)が停止される見込み。アメリカ環境衛星データ情報局(NESDIS)では主要な衛星プログラム(GOES-RやJPSS)の予算が縮小され、極域研究のPFOイニシアチブも現在の予算の3億6,900万ドル(409億5,900万円)から半減の見込み。国立気象局(National Weather Service)の科学技術室も、いくつかのプログラムを停止する方向。海洋観測のための艦隊の修正計画は2017年度と同等レベルの7,500万ドル(83億2,500万円)が維持される模様。

米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)
2017年度予算の12億ドル(1,332億円)より4.3%、5,100万ドル(56億6,100万円)の増加となる。これは次の2020年の国勢調査でのコスト増に備えるためである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]