[本文]
-
- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2017/05/15
- 抄訳記事公開日:
- 2017/07/19
-
全米科学・工学・医学アカデミーによる、世界的な健康問題に関する新しい報告書
- 本文:
-
5月15日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。
全米科学・工学・医学アカデミーからの新しい報告書では、グローバルヘルスにおける世界的リーダーとしての米国の地位を維持しつつ、現在および顕在化しつつある課題に照らしてグローバルヘルスの優先事項を特定し、これらの課題に対処するために米国政府およびその他の利害関係者に対して14の勧告を行っている。この14の勧告で4つの重点分野が特定されている。
・グローバルな健康保障の実現:
過去10年間に、世界的に大流行する可能性のあるインフルエンザ、中東呼吸器症候群コロナウイルス、エボラ出血熱、ジカ熱の突然の発生が世界中の人口を脅かすようになった。いずれのケースにおいても、米国を含む世界的および国家的な対応は、受動的で、連携されておらず、効果がなく、高くつくものであった。大統領政権は、米国政府内に権限と予算をもった調整機関を創設して、国際公衆衛生緊急事態に対する準備と対応のための積極的かつ費用対効果に優れた包括的なアプローチを開発させるべきである。米国保健福祉省、国防総省、農務省、米国国際開発庁(USAID)は、増大する抗菌剤耐性の脅威に対抗する能力を向上させるべく、国レベルでの投資を継続し、国際レベルでの投資を増加させるべきである。さらに、教育や情報交換の取り組みを通じて、低所得国や中所得国の備えと対応能力を強化すべきである。
・伝染病の継続的な脅威に対する持続的な対応力の維持:
ここ数十年にわたる努力により、エイズ、結核、マラリアから数百万人の命が救われたが、これらの3つの病気は引き続いて世界中の多くの人々の健康上の脅威となっている。例えば、HIV感染者は3,600万人を超え、毎年200万人の感染が発生している。米国疾病対策予防センター(CDC)、国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)、USAIDは、TB(結核)レベルの上昇に関する徹底的な世界的脅威分析を実施し、新しい診断薬、医薬品、ワクチン、および配送システムの開発のための行動計画を作成すべきである。さらに、関係する米国政府機関は、大統領のマラリア・イニシアティブを通じて、マラリアに対する取り組みを継続し、この病気の撲滅に向けて、パートナーと協力すべきである。
・女性や子供の命の救済と改善:
子供と妊産婦の死亡率は低下しているが、毎年600万人近くの子供が5才になる前に死亡し、30万人以上の女性が妊娠・出産に関連する原因で死亡しているが、その大部分は予防可能なものである。報告書は予防可能な母子保健死亡率の終了に向けたUSAIDの投資を増やすための資金の増加が必要であるとし、それには厳格なモニタリングと評価による優先的な介入も含まれている。
・心臓血管の健康の促進、がんの予防:
心血管疾患(CVD)、慢性閉塞性肺疾患、および肺がんなどの非伝染病(NCD)により、世界で毎年4,000万人もの人が死亡している。そのうちの4分の3は低所得国および中所得国におけるものである。これらの疾患を管理するコストも上昇しており、CVD単独では、2030年までに治療コストと生産性の損失が毎年1兆ドルにのぼると予測されている。これらの国の多くの保健システムは、歴史的に感染症を重要視して来たため、NCD患者のケアに十分な設備がなされていない。報告書は、USAID、国務省、CDCがCVDリスクファクターを対象とした戦略(すなわち高血圧や子宮頸がんの早期発見および治療、ガンの原因となりうるウィルスに対する予防)を実施するために、それらの国々が国レベルで民間のパートナーを活用し協力して活動できるように支援を行うべきであるとしている。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]