[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国王立協会
元記事公開日:
2017/05/24
抄訳記事公開日:
2017/07/20

EUの研究・イノベーション資金の重要性を分析した報告書の公表

Report lists UK universities and disciplines most dependent on EU research and innovation funding

本文:

英国王立協会の2017年5月24日付標記発表の概要は以下のとおり。

医学アカデミー、英国アカデミー、王立工学アカデミー、王立協会の国立4アカデミーが共同で作成した報告書がこのほど公表された。報告書はEUファンディングの投資先、支援する活動の種類、EUファンディングによって喚起される他の投資について明らかにしている。EUファンディングが重要であるがゆえに、英国の研究・イノベーション環境に対するBrexitの影響は極めて大きいとしている。

●学術分野

報告書では高等教育統計局(HESA)で提供されている最近(2014年度)の数字を分析することで、全学術分野においてEU政府組織から何らかのファンディングを受領していることを明らかにした。また同報告書は、このEUの資金源が研究ファンディング全体に占める割合によって分野のランク付けを行った。

最上位は考古学で、EU政府組織からファンディングの38%を受領している。続いて古典学(33%)、IT(30%)の順である。上位15分野のうち、7分野が社会科学、6分野が芸術・人文科学、2分野が自然・物理科学の主題領域である。

自然・物理科学および工学は絶対的数値において支配的で、臨床医学が2014年度に最大のファンディング額(1億2,000万ポンド)を受領、続いてバイオサイエンス(9,100万ポンド)、物理学(5,500万ポンド)、化学(5,500万ポンド)、IT(4,600万ポンド)の順である。これら分野は数値が高いだけに、英国がEU資金を利用できなくなった場合には、上記の収入を他の資金源で代替させねばならないという難題に直面することになる。

●高等教育機関

報告書では高等教育機関がEU政府組織から受けたファンディングについて解説している。EUファンディングの最大の受け入れ機関でトップはオックスフォード大学(6,030万ポンド)で、ケンブリッジ大学(5,950万ポンド)、UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)(4,570万ポンド)がこれに続く。

●産業界

報告書では学術界以外への影響についても触れている。EUファンディングは英国企業の研究開発支出全体のほんの一部分を占めているにすぎないが、英国の中小企業は2007年~2013年の期間にEUの資金から6億5,000万ポンド強を受領しており、これら企業の研究開発の17%を占めている。

●英国の各地域

報告書は研究・イノベーションを支援するEUファンディングの英国全土における分布状況を示している。イングランドはファンディングの最大シェアを占めており、”Horizon 2020″の85%、欧州構造投資基金(ESIF)の55%を受領している。しかしながら1人当たりの受領金額ではスコットランドが”Horizon 2020″から最高額(英国の平均44ユーロに対して55ユーロ)を受領している。ESIFはほとんどが中小企業向けで、ウェールズおよび北アイルランドは各々1人当たりの受領金額で(英国全体の平均23ユーロに対して)それぞれ125ユーロおよび60ユーロを受領している。

●EUファンディングの影響力

EUファンディングには、他の資金源からさらなる投資を誘引するという付加的利益がある。報告書では、研究開発支援にEUが支出する1ユーロごとにさらなる0.74ユーロが他の資金源から生じていると見積もっている。つまり全体として受領した96億ユーロが、総額166億ユーロの研究開発支出の実現に役立っている。

[DW編集局]