[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
エネルギー省(DOE)
元記事公開日:
2017/05/18
抄訳記事公開日:
2017/07/21

DOEとVAは連携して退役軍人のヘルスケア改善に取り組む

DOE and VA Team Up to Improve Healthcare for Veterans

本文:

2017年5月18日付のエネルギー省(DOE)による標記報道発表の概要は、以下のとおりである。

退役軍人省(VA)とDOEは、技術革新の推進と退役軍人のヘルスケアの変革に連携して取り組む。

この連携によって、VAが保有するヘルスケアとゲノムに関する比類のない膨大なデータをDOEが保有する高性能計算(HPC)、人工知能(AI)およびデータ解析に関する世界レベルの能力と結び付ける。両省の専門知識を組み合わせることによって、データ解析、次世代計算能力、精密医療、ゲノム科学およびヘルスケア提供の新しい領域を切り開くことが可能となる。

DOEとVAの協力の出発点は、MVP CHAMPION(百万人退役軍人プログラム、精密医療により直ちに効果を改善するための計算健康解析)というプロジェクトである。

百万人退役軍人プログラム(MVP)はすでに56万人以上の退役軍人が参加しているVAのプログラムであり、VAの豊富な健康データ資源を遺伝情報、ライフスタイル情報および軍務中に曝された環境に関する情報と結び付けることによって強化し、世界で最も価値のあるヘルスケアデータリポジトリの一つとするものである。

VAとDOEは、MVP CHAMPIONの下で保管するMVPデータを全米の研究者に提供するだけでなく、画期的な科学を育むビッグデータ環境を創り出せるような科学計算環境を確立する予定である。

このプロジェクトには、過去20年以上もの間VAのヘルスケアを受けてきた約2,400万人の退役軍人の健康データに加えて、国防総省(DOD)およびメディケア・メディケイドサービスセンター(Centers for Medicare and Medicaid Services)のデータならびに疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)の国民死亡記録(National Death Index)のデータが提供される。

VA とDOEの共同チームにはDOEの複数の国立研究所の科学者が参加している。VAとDOE施設を直接結ぶ高速ネットワークは、2017年6月までに開設される予定である。

2017年4月にVAとDOEの科学者、医師、幹部が集まり、退役軍人支援における優先課題の解決に向けてHPCを活用するための技術ロードマップについて検討した。その結果、早期に効果を上げそうな優先課題として次の3課題が抽出された。

自殺予防のための患者一人一人に個別化された解析:
退役軍人の自殺防止に資するため、個々の患者に特有のアルゴリズムを開発し、自殺リスクのある患者の特定を支援する。プロジェクトでの成果は、自殺防止に取り組むVAの臨床医を支援する臨床意思決定支援システムの開発等に使われることになる。

致死性前立腺がんと非致死性前立腺がんの識別支援:
致死性前立腺がんと非致死性前立腺がんの識別を支援する手法を開発する。このプロジェクトにより不要な治療を減らすことができれば、患者の生活の質が向上するとともに、VAも資源を最も効果的な分野に集中させることができる。

循環器疾患(CVD)に関する予測と診断の改善:
CVDに関する新しい予測手法を確立することによって、個々の患者に適合する薬物治療法を明らかにする方法等を開発する。新しいツールは、退役軍人によく見られるCVDの型に関する予測、診断および管理の能力を高める。

これらのプロジェクトは、大規模データ解析、コンピュータモデリング、大規模機械学習および自然言語処理といった重要分野におけるDOEの技術開発を推進し、科学、エネルギー、国家安全保障といったDOEの任務に大きな効果をもたらす。

インテル社、IBM社、GE社およびエヌビディア(NVidia)社をはじめとする次世代コンピューティング、データ解析およびヘルスケア分野の重要企業の指導層は、この共同の取り組みに注目している。VAとDOEの連携プロジェクトには、リスクを分かち合い、プロトタイプを開発し、進歩を加速するために民間セクターを巻き込んでいく可能性がある。

現在、米国は、大規模な健康データベースと世界最先端のデータ解析能力の連携を実現し得る世界で唯一の国である。この連携により、米国は次世代のデータ解析における最先端技術を開発し、退役軍人を含む全ての米国人の生活の質の向上をもたらすことができる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]