[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府
元記事公開日:
2017/08/17
抄訳記事公開日:
2017/09/27

大統領府から各省庁への2019年度研究開発予算優先項目に関する伝達事項

Executive Office of the President: FY2019 Administration Research and Development Priorities

本文:

8月17日付、大統領府より各省庁への標記伝達事項の概要は次のとおりである。

科学技術において米国が主導権を握ることは、政権の最優先事項である国防、経済発展、雇用創出という目標を達成するために極めて重要である。自由市場資本主義と相まって、アメリカの独創的な才能は数多くの技術的ブレークスルーをもたらして来たし、これからも起こし続ける。これまでのアメリカでの発明は人類の歴史を根本的に変えた。白熱電球、飛行機、衛星ナビゲーション、インターネットは何百万ものアメリカ人、何十億もの世界中の人々の生活を変えた。将来の発展を推し進めるにあたり、研究開発プログラムや研究施設に対する連邦政府の投資は重要な支援の役割を果たす。

この書面は現政権が行政管理予算局(OMB)に提出する2019会計年度の研究開発優先事項を定めるものである。

研究開発優先分野

軍事的優位性
米軍は次々と現れる脅威に対し、最先端のツールや技術を必要とする。省庁は将来の米軍を支える研究開発に投資すべきであって、これにはミサイル防衛力の開発、抑止力のある極超音速の武器や防衛力、自律的な宇宙システム、信頼性の高いマイクロエレクトロニクス、将来のコンピュータ能力、などが含まれる。軍への連邦政府の研究開発投資は戦場の域を超えて人々の生活を変えるようなブレークスルー技術の開発をもたらした。従って軍事および民生のデュアルユースの可能性のあるプログラムが非軍事面での発展にも活用されることが望まれる。

安全保障
アメリカ本土に対し増大する脅威のため、連邦政府はテロ攻撃を防ぎ、敵対的脅威や自然災害による損害を最小限にし、アメリカの国境を守るために必要な技術を開発すべきである。近年、その数および複雑性において急激に増大している物理的脅威やサイバー攻撃から国家の重要インフラを防衛しレジリアンスを強化する技術に投資すべきである。特に、新しい技術を社会に導入するにあたり、安全安心であるように留意すべきである。

アメリカの繁栄
連邦政府の研究開発投資はアメリカの経済成長にとって重要であり、雇用機会をもたらす。自立システム、バイオメトリクス、エネルギー貯蔵、遺伝子編集、機械学習、量子コンピューティングのような新しい技術は経済を動かし、全く新しい産業を作り出すという高い可能性を有している。省庁はこれらの分野で基礎研究への投資を継続し、後半の研究、開発、展開の段階において企業の投資と重複しないよう取り組みを続けるべきである。

エネルギー優越性
長期的に継続した低価格なエネルギーを提供することにより、エネルギー自給を通じて安全保障を確保でき、安定的に高賃金の雇用の創造に資することができる。国内エネルギー源を開発することは、化石燃料、原子力、その他の再生エネルギー源からなるクリーンエネルギー・ポートフォリオの基礎となる。2018年度に始まったように、連邦政府の投資は研究初期段階に留め、後期段階での研究、開発、商業化についてはより一層民間企業に任せて行くべきである。

健康・保健
医療費を下げつつ、健康を増進する、というのは現政権の方針である。生物医学プログラムを優先することにより、疾病を予防、治療、撃退し、世界をけん引するアメリカの医療の立ち位置を保つことができる。高齢化、ドラッグ中毒との闘い、その他公衆衛生上の危機を解決することを優先して、研究開発をすべきである。基礎生物学研究とともに、新しい発見が見込まれる分野を開くようなツールや技術に投資すべきである。特に、より効率的で効果的な健康医療に繋がる研究開発を優先すべきである。

研究開発優先実行事項

益々問われる政府の説明責任と効率性
新しい研究プログラムを考えるにあたり、省庁はそのプログラムが健全な科学にのっとっていること、既存の研究開発プログラムと重複していないこと、公共の利益に寄与する可能性があることを確証すべきである。また、民間企業に任せたほうがより効率的に進められる可能性がある既存の研究開発プログラムを特定し、連邦政府の介入が真に必要か否か、修正もしくは廃止も含めて考えるべきである。可能な限り、研究開発の結果を定量的に評価する方法を開発し、それをすべての研究開発プログラムに適用すべきである。

革新的な初期段階の研究を支援
リターンが大きい技術の開発において、初期段階の研究は往々にして不確実性が高く、民間企業が投資するほどの経済的インセンティブを伴わないことがある。各省庁は基礎研究や初期段階の応用研究を優先すべきであり、後期段階の研究開発は民間企業からの投資で賄うことにより、変革をもたらす製品やサービスが生まれる結果となる。

省庁間調整の最大化
現政権の研究開発優先項目を進めるには省庁間のコーディネーションが必須となる。それにより、各々の省庁が単独で動くよりも大きなインパクトが生まれる。既存の省庁間イニシアティブを進め、適宜、国家科学技術会議(NSTC)を通して、研究開発プログラムの調整、推進、計画をできる限り推し進めるべきである。

研究開発人材とインフラ

未来を見据えた人材開発
科学技術工学数学(STEM)教育と徒弟教育を通してアメリカの労働力の技術訓練を向上させたい。新しい技術は多くの雇用機会をもたらすが、一方で、技術スキルを持った有能な人材が必要となる。アメリカの競争力を維持し、将来の仕事に携わることができる人材を国内で確保するために、コンピュータ科学を含むSTEM教育と人材教育を各省庁のプログラムに組み込むべきである。すべてのアメリカ人が、STEM教育を受けられるようにすべきである。定量的な測定方法を開発し、データを集め、STEM教育プログラムの効果の分析もすべきである。

研究インフラの近代化と管理
最先端の研究インフラを最新のものにして維持するということは研究開発投資の中で重要なことである。他の省庁、州、地方都市、民間企業、大学、それに国際的パートナーを得て、革新的なパートナーシップを組めば、使われていない施設を最大限利用し、新しい研究開発施設の費用を分担することができる。新しい施設の建設・運用の提案にあたっては、既存の施設の運用・維持への投資とのバランスが求められる。使われていない施設を処分し、長期的、多年度投資を注意深く進め、資金が年度末に無駄に処理されないようにすべきである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]