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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2017/08/16
- 抄訳記事公開日:
- 2017/10/03
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微生物、屋内環境、健康の関係を理解するための研究課題の概要
- 本文:
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8月16日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。
屋内環境下で微生物とヒトに関する研究が増えているにもかかわらず、それらの相互接続関係について多くは未知のままである。このため、NASEMは新たな報告書において、屋内微生物の形成、動態、機能をより包括的に理解するための研究課題を提案しており、現在および将来の建造物を改善させ、また、ヒトの健康と福祉の向上に資することを目的としている。
報告書が対象とする屋内環境とは、家庭、オフィス、学校などの空間のことである。これらの環境下で見られる微生物は、ウイルス、細菌、および菌類のことであり、これらは空気や水を介して建造物に入りこみ、ペット、植物、ねずみ等や室内の汚れの中に見いだされる。 これらの微生物は、ヒトの皮膚や消化管にも生息し、ヒトから屋内環境に放出される。
屋内微生物とヒトの健康との関係は、有害、有益、中立なものまで様々である。 例えば、湿った建物に見られる特定の微生物は呼吸器の問題を引き起こすが、他方で、幼児期に微生物に曝露された子供は、喘鳴やアレルギー性疾患を発症しにくいことが示されている。 報告書は、ヒトに対する深い研究や実験動物モデルの調査は、屋内空間で見られる微生物への曝露と多様なヒトの健康への影響との関連性の理解に資すると述べている。
屋内環境に見られる微生物とヒトとの間の相互作用の理解と予測を進歩させるためには、分野横断的研究プログラムが必要であり、臨床実務者や建築設計、運用、保守の専門家など、複数の科学、健康、工学分野の専門知識を統合することが求められる。これらの関連性をより深く理解し、その知識を実践展開すること(建造物の設計・保守のためのガイダンス・基準の改定など)が重要である。
報告書で特定された優先順位の高い研究課題は次のとおりである。
・微生物群と屋内システムとの関係の明確化
・屋内環境微生物への暴露によるヒト健康への影響評価
・屋内環境微生物への人的介入およびエネルギー使用による環境・経済影響評価
・微生物・建造物の計測のための高度なツールと研究インフラの開発・整備
・研究成果の実践への展開 [DW編集局+JSTワシントン事務所]