[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立保健医学研究所(INSERM)
- 元記事公開日:
- 2018/01/23
- 抄訳記事公開日:
- 2018/03/09
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国立保健医学研究所(INSERM)の2018年ロードマップ
- 本文:
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2018年1月23日付国立保健医学研究所(INSERM)の標記発表の概要は以下のとおり。
INSERM 理事長の Yves Levy 教授は、2018年1月16日の新年行事における講演の中で、完了した活動の報告とともに、今年度に実行予定の主要な施策を発表した。
・遺伝子治療と遺伝的多様性
科学技術計画に関しては、技術研究促進措置(ART)と分野横断的プログラムが今後のINSERMの活動の重要な手段である。
ARTは技術研究の促進とそれらの研究から得られる革新的技術の研究チームへの提供を狙ったものである。ARTのプログラムはすでに2件ある。「超音波ART」では、5つの研究室が革新的な神経画像装置を実際に受け入れており、各々のプロジェクトで役立てられることになる。これと並行して、たとえば新生児の機能的脳画像処理など、別のプロジェクトがARTによって展開されている。第2のARTは「バイオプリンティング」に関するもので、昨年10月にボルドーで開始された。4件のパイロット・プロジェクトが展開され、ARTはAVIESAN(全国生命科学・医療研究連盟)の動物実験の代替法に関する作業グループの一環で貢献している。
2018年初めには「遺伝子治療」に特化した新規ARTがエヴリーで開始される。これにより、新たなウィルス・ベクター、生物生産技術、ゲノム編集ツールの開発が可能になる。目的はINSERMの研究室由来の概念の臨床への技術移転を促進することにある。
分野横断的プログラムは現在進行中の戦略計画によるもう一つのイノベーションである。実施されている当初2件のプログラムは、「高齢化(AgeMed)」と「細菌叢」に関するもので、順調に展開されている。「一般住民の遺伝的多様性」に関する第3のプログラムが今年開始される。長期的なフォローアップを伴うが、住民のゲノム・マップと結びついた貴重な知識のデータベースの構築・活用が可能になる。
・世界的ネットワークを目指す
英国との欧州共同研究室(LEA)2件の設置、ライデン大学との協力協定の締結、EUの主要プロジェクトの統括、重要度の高い多数のEUイニシアティブ運営への積極的関与など、2017年INSERMは欧州研究圏の構築に積極的に参画した。このような協力活動は2018年も継続実施される。その最初の取り組みが「2025年目標のフランスのゲノム医療計画」とGenomics Englandのプログラムとの枠組み協定の締結である。
中国では武漢に高セキュリティ生物学研究室P4がこのほど開設されたが、これはリヨンのINSERMジャン・メリューP4をモデルとして設計された。新たに発生する感染症の予防・抑制に関する協力が推進される。さらに仏中両国は人工知能やシルバー・エコノミーのテーマに関する新規研究プロジェクトを立ち上げる。シルバー・エコノミーに関する仏中協力は、INSERMが率いる研究に基盤を置くことになる。
上記のほかに、米国を相手とする「医療と環境」(対NCSE)「薬物依存」(対NIDA)、アフリカにおける「ワクチン研究」や「新たに発生する感染症の研究」、国立エイズ研究機構(ANRS)ネットワークのあらゆる活動などのテーマに関する現在進行中または将来のプログラムを加味すると、INSERMの国際的展開がとりわけ濃密になっていることは明らかである。それを明確化するべく、Yves Levy 理事長はINSERM世界ネットワークの創設・展開を発表した。
・社会的課題の中心における役割
複数の新たな任務がINSERMに対してすでに委任済みか、今後委任が予定されている。首相は食料に関する政府会合において、「農薬および農業界で使用される分子の影響に関するINSERMの専門能力」の必要性を説いている。一方で研究、保健、環境移行を担当する各省は、INSERMに「第4次保健・環境国家計画」を作成すよう請願している。さらにINSERMは「公衆衛生研究国家計画」の実行準備および「第3次希少疾患計画」を策定する必要がある。
これらのプロジェクトや目標はINSERM単独では実施できないが、他の公的実行機関およびフランスの生物医学研究業界との調整が必要である。
[DW編集局+JSTパリ事務所]