[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/02/09
抄訳記事公開日:
2018/03/14

歳出上限引き上げに伴い、科学技術予算が増額される見込み

Congress Budget Deal Would Raise Spending Caps

本文:

2月9日付け(8日に書かれ、9日に修正)、米国科学振興協会(AAAS)の標記記事の概要は次のとおりである。

会計年度はすでに三分の一が終わってしまったが、米国議会はやっと歳出上限を2年間引き上げることになりそうである。しかも実に大幅な増加である。2018年の超党派予算条例の下、裁量予算上限は2018年度は1,430億ドルの増加(昨年比12.9%増)、2019年度は1,530億ドルの増加と予想されている。両方とも、2年前になされた予算措置よりはるかに多い額である。

残るハードルは、政府閉鎖を避けて、法として成立できるか、である(2月9日時点:日にちが変わるまでには出来なかったが、早朝に法案は議会を通過した。3月23日までには最終科学関連予算を作り上げる)。

上記のように進めば、2018年度は実質的に大幅な予算増加となる。また、2019年度は、前年比でみるとより緩やかな増加となる。これにより、今年度、いくつかの科学技術プログラム予算は増加し、翌年もより緩やかではあるが、増加ということになる。

民主党は常に軍事、非軍事予算の同等の増加を主張してきたが、最終的にはそのように同等とはならなかった。それでも、非軍事裁量予算の増加により、国立衛生研究所(NIH)、米国航空宇宙局(NASA)、米国立科学財団(NSF)のような機関にとっては2011年に最初の上限が定められて以来、最大の増加となった。

今回は向こう2年間の措置であるが、法的には上限はその後さらに2年間、2021年まで据え置かれる。これにより、政府機関は2020年度には急激な予算減少となる可能性があるが、議会が又、救済措置を施すことも考えられる。

科学技術予算は?
歳出上限の引き上げは自動的に科学関連省庁に予算増加をもたらすものではない。議会はさらに、すべてのオムニバス予算案に同意せねばならず、各々の省庁やプログラムのファンディングを決めなければならない。議会が新しい措置で行くと、予算的にはずっと余裕ができ、過去の事例から予測すると、その大部分が科学技術に向けられる可能性がある。

問題点
今回の上限にはまだ大きな問題が残っており、最終予算に向けて下記を解決しなければならない。

・エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の存続:現政権と下院は削除要求。上院は大幅支援。歳出上限が上がったことにより、ARPA-Eは存続すると思われる。

・米国科学財団(NSF)内部配分:下院ラーマー・スミス氏(テキサス・共和党)は物理、生物科学を優先、他の分野で減額提案。上院はこれについて特に意見なし。新規調査研究船の建造も上院と下院で意見が分かれている。

・米国航空宇宙局(NASA)地球科学と宇宙科学:下院はNASAの地球科学プログラムを11.3%削減、その分、惑星科学に充当。上院は逆を推奨。今回の上限引き上げにより、両方に若干の予算増の可能性あり。

・海洋大気局(NOAA)気候研究:下院と現政権により19%の予算削減要求。上院は昨年度と同レベル予算を推奨。新規NOAA研究調査船の建造は下院により却下、上院と現政権は新規建造に7,500万ドルを推奨。

・米国地質調査所(USGS)気候研究開発:下院と現政権が削減を要求したが、上院の法案により保持。下院と現政権が気候科学センターの数の半減を希望も上院はそれも却下。

・エネルギー省(DOE) 核融合エネルギー:下院は国内核融合研究および国際的核融合研究(ITERプログラム)に若干の増額を認めたが、上院は米国のITER参画に反対し、国内の核融合研究についても30%削減。

ハリケーン被害救済に関わる科学関連省庁予算
上記予算はこれからの予算作り如何であるが、下記のハリケーン被害救済予算は、上限に拘わらず確実に実行される。

NOAA: 1億2,090万ドルをマッピングや洪水予報等に;5,000万ドルを気象用スーパーコンピュータのインフラおよび衛星地上サービスの向上に
NASA: 8,130万ドルを施設被害修理に
USGS: 4,220万ドルを山火事被害修復に
USDA: 2,200万ドルをハリケーン被害にあった研究施設修復に
NSF: 1,630万ドルを無線観測施設の修復に
DOE: 1,300万ドルをグリッド関連の予算に

[DW編集局+JSTワシントン事務所]