[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/02/12
抄訳記事公開日:
2018/03/16

トランプ政権、2019会計年度予算教書に示された予算削減の一部を撤回

The 2019 Science Budget Backs Off Some Cuts, Not Others

本文:

2月12日付の米国科学振興協会(AAAS)による標記記事の概要は、以下のとおりである。

本日ホワイトハウスから2019会計年度予算教書が発表されたが、それに先立って議会で予算審議を巡る包括的な取引が行われ、2019会計年度における裁量的経費上限枠の大幅引き上げを含む2018年超党派予算法(Bipartisan Budget Act of 2018)が2月9日に成立した。

本日発表された予算教書には国立衛生研究所(NIH)および国立科学財団(NSF)予算の大幅削減を伴う基礎科学予算の20%超の削減や環境科学プログラム、エネルギー省(DOE)における応用技術研究等の予算削減が含まれている。

2019会計年度における非国防分野の裁量的経費については、今回の予算教書で650億ドルの削減が示されていたが、上記予算法によりこの経費の上限枠が680億ドル引き上げられたため、予算教書の額との間に1,320億ドルという莫大なギャップが生じた。このような状況変化に対して、ホワイトハウスは予算教書に示されたこの経費の額にさらに750億ドルを追加することを急遽決定した。

この追加予算は、科学技術の分野では主としてNIH、NSFおよびDOE科学局(Office of Science)といった基礎科学担当部局に配分された。これによって2019会計年度予算におけるこれらの部局の予算要求額は大幅削減を免れ、従来の予算額と同水準の額に留まることとなった。しかし、追加予算の詳細についてはまだ明らかになっていない。

他方、基礎研究以外の研究開発分野のうちDOEのエネルギー高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency-Energy (ARPA-E))、環境保護庁(EPA)における気候研究、米国地質調査所(U.S. Geological Survey)の気候科学センター(Climate Science Center)等については、昨年の予算教書と同様に厳しい予算削減が引き続き求められる可能性がある。

2019会計年度における非国防分野の裁量的経費については、上記予算法により上限枠が5,970億ドルと定められたのに対し現時点でホワイトハウスが求めている額は5,400億ドルに過ぎない。このため、2019会計年度の研究開発予算については、今後の議会審議によりさらに増額される余地がある。

とはいえ、その前に議会は2018会計年度予算について結論を出さなければならない。そのための審議は今後数週間のうちに決着する見込み。その過程で2019会計年度予算に関する議会審議の方向についても何らかのヒントが得られる可能性がある。

背景情報:
*米国の「X会計年度」はX-1年10月からX年9月までの期間。
*2018会計年度予算はまだ成立しておらず、議会で審議中の状態。
*2018会計年度に入った昨年10月以降の政府の運営は、予算が未成立の状態にあったため、期限付きの暫定予算によって行われていた。
*暫定予算の有効期限は2月8日であった。今回の議会での予算を巡る取引は、暫定予算の有効期限(2月8日)が迫りつつあるギリギリの状況の中で政府機関の閉鎖を防ぐために暫定予算の延長に関する合意を何とか成立させようとして行われた取引。
*2月9日(金)の朝、トランプ大統領の署名により2018年超党派予算法が成立し、この取引が成立し、暫定予算は延長されることとなった。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]