[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2017/11/27
抄訳記事公開日:
2018/04/04

産業戦略:将来に適応する英国の建設

Industrial Strategy: building a Britain fit for the future

本文:

ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2017年11月27日付で標記戦略を発表し、英国の生産性や国民の収益力の向上などの長期構想を明らかにした。本産業戦略は、2017年1月に公表された産業戦略のグリーンペーパー「Building our Industrial Strategy」を議論のたたき台とし、政府、産業界、学術界等からの幅広い関与が約2,000に及ぶ意見・コメントのかたちで取りまとめられた結果、ホワイトペーパー(白書)として公表されたものである。発表の概要は以下のとおり。

2030年までに英国を変革して世界最大のイノベーション国家にするという目的で、政府は産業戦略チャレンジ基金(ISCF)に対して、今後3年間に7億2,500万ポンドの追加投資を行うことを決めた。英国が直面する最大のグローバルな課題やチャンスのいくつかに対処するためである。これには、英国の建築セクターを変革し、安全で健康的でエネルギー消費量が少ない快適な生活・労働環境の創出に役立てるための1億7,000万ポンド、病気の早期診断法を改善し英国全土の患者に精密医療を展開するための最高2億1,000万ポンドが含まれる。

これに先立ち政府は、次世代バッテリー技術に対する2億4,600万ポンドや英国全土のロボット技術ハブに対する8,600万ポンドの投資など、第1波のISCFプロジェクトに対して10億ポンドを約束している。

つい先ごろメイ首相は、研究開発に対する投資のレベルを引き上げて、対GDP比で1.7%から2027年までには2.4%にする目標を発表した。これは今後10年間に先進技術に対する約800億ポンドの追加投資を意味し、全セクターの改革、新産業の創出、英国中のイノベーション支援に役立つものである。

政府はまた、建設、ライフサイエンス、自動車、AIの各セクターとの一連の「セクター協定(Sector Deals)」を推進する。まずこれら4セクターが、民間との共同投資に支えられた、この「協定」に基づく新しい戦略的かつ長期的な連携関係から恩恵を受けることになるが、他のセクターとも変革をもたらすセクター協定の作業を進めていく。

● 本戦略において政府が特定した主要課題

本戦略では英国がグローバルな技術革命を主導できる領域として、次の4つのグランド・チャレンジを特定している。

人工知能(AI):
英国を人工知能とデータ革命の最先端に位置付ける。ISCFを活用して、英国の世界トップクラスの研究をベースに産業界と協働でAIおよび先進解析技術の革新的な活用法を開発する。

クリーン成長:
クリーン成長へのグローバルなシフトから得られる英国産業の利益の最大化を図る。低炭素産業に関するイノベーションに1億6,200万ポンドを投資する。また「バイオエコノミー」に関する新規戦略を策定する。

将来の輸送手段:
人、モノ、サービスの移動手段について英国は世界の先頭に立つ。英国の電気自動車所有登録者数は2010年以降急速に伸びている。政府は2021年までに完全自動運転車が英国の路上で見られるようになると期待している。

高齢化社会:
イノベーションの力を活用して高齢化社会のニーズに応える。2046年までに4人に1人が65歳以上になる。高齢人口が技術、製品、サービスに対する新たな需要を生み出す。

● 生産能力を支える5つの基盤

本戦略では生産能力を支える基盤として、着想(ideas)、人材(people)、インフラ(infrastructure)、企業環境(business environment)、地域(places)の5つに着目している。

● 主要政策

本戦略では主要政策を上記5つの基盤ごとに示している。

(着想)
・2027年までに研究開発投資全体を対GDP比2.4%に引き上げる。
・研究開発費税額控除の比率を12%に引き上げる。
・イノベーションの価値を占有するべく、ISCFの新規プログラムに7億2,500万ポンドを投資する。

(人材)
・英国の世界トップクラスの高等教育制度と併せて世界でも最高位を競う技術教育制度を確立する。
・科学・技術・工学・数学(STEM)能力の不足に対処するため、数学・デジタル技術教育に4億600万ポンドを追加投資する。
・国民の技術再習得を支援する「国民再研修制度」を新設する。手始めに建築技術およびデジタル技術研修に6,400万ポンドを投資する。

(インフラ)
・生産性投資国家基金(NPIF)を310億ポンドに増額して、輸送、住宅建設、およびデジタル・インフラに対する投資を支援する。
・4億ポンドの充電インフラ投資および別途1億ポンドのプラグイン・カー助成金拡大により、電気自動車を支援する。
・10億ポンド強の公共投資によりデジタル・インフラを増強する。これには5G(第5世代移動通信システム)向けの1億7,600万ポンドおよび各地域でのフル光ファイバー網の展開促進に対する2億ポンドが含まれる。

(企業環境)
・セクター協定(各セクターの生産性向上を目的とする政府・産業界間提携)の開始・展開。最初のセクター協定はライフサイエンス、建設、人工知能(AI)、自動車の各セクターにおいてである。
・革新的で潜在能力の高い企業に対する200億ポンド強の投資を推進する。これには、英国ビジネス銀行でインキュベートされる25億ポンドの投資ファンドの新設などが含まれる。
・生産性の低い企業のいわゆる「ロングテール」に対処する方法など、中小企業の生産性向上や成長に最も効果的となり得る施策の再検討を開始する。

(地域)
・地域の能力に基盤を置いて経済的機会を生み出す地域の産業戦略に賛同する。
・都市間輸送に17億ポンドを投資する都市改革基金を新設する。これにより都市地域内の接続性を改善することで生産性を向上させるプロジェクトへの資金支援を行う。
・「教師啓発報奨金」の導入準備に4,200万ポンドを投入する。これにより後進地域で勤務する教師向けの高度専門能力啓発予算1,000ポンド当たりの効果を試験する。

[DW編集局]