[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
Innovate UK
元記事公開日:
2018/04/04
抄訳記事公開日:
2018/04/20

研究とイノベーションをつなぐ「産業戦略チャレンジ基金」

Industrial Strategy Challenge Fund: joint research and innovation

本文:

Innovate UKおよびビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の2018年4月4日付標記発表の概要は以下のとおり。

産業戦略チャレンジ基金(ISCF)には、産業界・社会の重要課題に対処するべく、企業と世界トップクラスの英国の研究を一体化させる狙いがある。ISCFを通じたファンディングにより、英国の企業と研究者を支援する。ISCFは英国政府が4年間に亘り研究・開発に対して増強する47億ポンドの一部である。研究・イノベーションが政府の産業戦略の主役をなすよう考案されたものである。

ISCFの支援対象となる当面の課題には次のものがある。

・データから早期診断・精密医療へ
発症までに何年もかかる重篤な病気がある。発症までに平均14年かかるすい臓がん向けなど、効果的な治療法の開発が次第に困難になっている。この課題は、英国の研究者が作成した豊富なデータを、医療サービスの実世界の証拠と結びつけることにある。これにより産業界は、病気の早期診断を行い、臨床医が個々の患者に最も適切な治療法を選択するのに役立つ新製品やサービスの創出が可能となる。

・健康的な老化
2040年までには英国民の8人に1人が75歳以上になる(現在は12人に1人)。活動的で生産的で自立していることは、増大する多数の高齢者にとって重要である。この課題は、高齢者の心意気が満たされるように、また適切で効果的な介護によって高齢者の年齢相応の自立したライフスタイルを支援できるように、イノベーションを促すことである。

・エネルギー革命による繁栄
世界のエネルギーの約80%がいまだに化石燃料由来のものである。安全で安定した気候を保持するには、これを迅速に変える必要がある。世界中の国が再生可能エネルギーに向かって動いており、この10年間で倍以上の投資となっている。しかしエネルギーの大部分をクリーンで安価にするためには、はるかにインテリジェントなシステムが必要である。スマート・システムはエネルギーの供給、貯蔵、使用をリンクさせることができ、電力、暖房、輸送を結びつけることでエネルギー効率を劇的に向上させる。

・建築の改革
建築物の建造方法は40年間実質的に変わっておらず、英国が必要とする建造物を実現するには劇的な見直しが必要である。現在の建築コストは高く、しかもあまりにも多くの建築物がエネルギーを浪費している。建築の改革が必要で、そうすることでより安全、より健康で、エネルギー消費も少ない生活や仕事のための手ごろな価格の場所を創出することができる。

・農場から食卓までの食料生産の変革
90億の人口に食料を供給するためには2050年までにさらに60%の食料増産が必要になるほか、水の需要は農業分野だけでも20%上昇すると考えられる。食料生産の方法はとりわけより効率的で持続可能である必要がある。精密技術を用いることでこれを実現できる。食料生産を変革し、一方では排出、汚染、廃棄物、土壌浸食を削減する。

・次世代サービス
サービス業は英国経済のほぼ80%を占める。人工知能やデータ解析のような技術がどこからでもアクセスできるようになると、それに対する英国のサービス分野の備えも確保する必要がある。サービス産業がこのような技術の応用によって各々のサービス運用に変革をもたらす方法を特定するのに、先駆的ファンディングが役立つ。

・未来の観客
仮想現実、拡張現実、複合現実など没入型技術は我々を取り巻く世界の体験方法を変えつつある。この課題では、創造的な企業、研究者、技術者を結集して、一般公衆がアクセス可能な衝撃的な新規体験を創出する。

・量子技術
量子技術に対する先駆的ファンディングに最高2,000万ポンドを投資する。これは、多数のチャレンジ領域にわたる効果を意識したものである。医療デバイスからセンサー、そしてより安全な通信システムに至るまでの一連の新製品が、量子技術として知られる新興の物理科学を用いて可能になる。

・極限環境におけるロボット技術と人工知能
政府は極限環境に配備可能な新技術・システムの開発に4年間で9,300万ポンドを投資する。

・最先端の医療
この課題は、様々な種類の医薬品を製造し、個々の患者に適切な薬と治療を施すことにある。政府は、新たなデジタルヘルス製品・技術の開発、先進の治療法、医薬、ワクチンの開発・製造の領域に4年間で1億8,100万ポンドを投資する。重要なのは、患者による新薬の利用を迅速化することである。

・「ファラデー・バッテリー・チャレンジ」
次世代の電気自動車を動かすには、費用対効果がよく、高性能、持続可能、安全、軽量で、リサイクル可能なバッテリーが必要である。この課題では電気自動車に必要なバッテリーの設計、開発、製造を支援する。政府は、研究、開発、施設の規模拡大に4年間で2億4,600万ポンドを投資する。

・自動運転車
政府はISCFを活用して、次世代のAI・制御システムを開発する共同研究開発プロジェクトに投資する。

・製造業と未来の材料
ISCFを通じて、航空宇宙、自動車、その他の先進製造セクター向けの手ごろで軽量の新規複合材料を開発する。

・衛星・宇宙技術
衛星試験施設を設立する。これにより今後の衛星の組立やペイロードの軌道投入のための新規打ち上げ技術・製造・試験機能を支援する。

[DW編集局]