2018年3月24日付の「鋭科技」は、「中国の女性科学者である張弥曼氏、ユネスコの『世界傑出女性科学者賞』を受賞」と報じた。本記事ではその概要をまとめる。

3月22日の夜、2018年度「世界傑出女性科学者賞」の授賞式がパリのユネスコ本部で開催された。中国科学院の院士、中国科学院古脊椎動物 古人類研究所の研究員である張弥曼氏を含む5名の女性科学者が受賞した。

このほど、ユネスコが発表した同賞の選定理由によると、張弥曼氏による創造的な研究活動が、水生脊椎動物の陸地への進化に関する研究に新たな観点をもたらしたとのこと。その夜、張弥曼氏は受賞の挨拶の中で、「同賞を受賞し、大変光栄に存じております。私は60年前から古生物学に従事し、長年にわたり、国内外の同業者から研究に対する協力とご支援をいただきまして、誠にありがとうございます」と述べた。講演の中で、張弥曼院士は英語で自分の研究生涯を述べ、同僚と家族に、特に自分の娘に感謝の意を表した。

張弥曼氏は現在82歳、世界的に名を知られた古魚類学者であり、かつて中国科学院古脊椎動物 古人類研究所の三代目、四代目所長を務めた。張氏はイギリス・リンネ協会（Linnean Society）・外国籍フェロー、スウェーデン王立科学アカデミー（Royal Swedish Academy of Sciences）・外国籍院士に選出。また、2011年、2015年にシカゴ大学、アメリカ自然史博物館（American Museum of Natural History, AMNH）リチャードギルダー大学院（Richard Gilder Graduate School）それぞれから栄誉博士学位を授与され、2016年に国際古脊椎動物学会の最高賞である「ローマー‐シンプソン ライフタイム アチーブメント・アワード」（Romer Simpson Lifetime Achievement Award）を受賞した。

「世界傑出女性科学者賞」は、ユネスコとフランスのロレアル(L’Oréal)グループが1998年に共同創設し、科学の進歩に卓越した貢献をした女性を世界五大陸から毎年5名の女性科学者を選定、女性科学者の傑出した成果を表彰し、その科学研究事業を支援する。

ユネスコが2017年11月13日に同賞の受賞者を公表した後から今回の受賞までの間に、張弥曼氏の実績が外国の核心的なジャーナルに頻繁に報道された。

2009年、「彼女は1億年以上眠っていた『小魚』から石油の存在を発見」という研究成果に関する報道が発表された。
以下、同報道が紹介された際の内容を記す。

張弥曼氏の本籍は浙江省嵊県、1936年4月に南京生まれ、その後、父母とともに、家を江西省に移した。油田採掘場で、彼女は含油層を正確に発見した。

大慶油田（黒竜江省大慶に存在する油田で、1959年に中国屈指の大油田として発見）が開発された初期に、各分野の専門家らが一堂に集まり、各自の専門的知識に基づき、地下の石油分布が推定された。当時、数多くの専門家は「含油層は、約1億5000万年前の白亜紀（Cretaceous period、地球の地質時代の一つで、約1億 4500万年前から6600万年前を指す）前期に存在するため、石油探査は白亜紀前期の地層に集中すべき」という考えであった。しかし、張弥曼氏は、異なる観点を有しており、地層内の化石標本を根拠に、東アジア地域における古魚類進化の法則の研究と結びつけ、「石油埋蔵量の豊富の地層は、約1億年前の白亜紀後期に存在している」という観点を提出した。張氏の専門的知見は、地質学の専門家による含油層の発見に科学的根拠を提示した。その後、大慶油田で初めて石油が噴出したことで、張弥曼氏の知見が証明され、当時、センセーションを巻き起こした。

勝利油田（大慶油田に次ぎ二番目に操業が開始された大油田。1962年に発見され、1964年から本格的な生産が開始）が開発された時、張弥曼氏は同地域が過去2回、海洋に覆われていたことを発見し、含油層の時代は普通の油田と異なっているという見解を示した。同見解は勝利油田の開発を順調に進めていく上の条件となった。

2005年、第65回古脊椎動物学会年次総会がアメリカで開かれ、張弥曼氏は、古脊椎動物学術分野で傑出した貢献をしたことに対して表彰された。世界で数少ない徳望の高い科学者のみがこのような国際科学学術会議で受賞されている。

すべての化石は長い歴史の上での目撃者となっており、張弥曼氏の仕事はこれらの化石に隠れている謎を解明することである。

[JST北京事務所]