[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/03/07
抄訳記事公開日:
2018/05/15

AAASによるファクトチェック:ホワイトハウスは昨年度予算で科学関係経費を増額せず

Fact-Check: No, the White House Did Not Try to Increase Science Funding in Last Year's Budget

本文:

3月7日付けの米国科学振興協会(AAAS)による標記記事の概要は以下の通りである。

科学技術政策局(OSTP)は、トランプ政権初年度における一連の科学技術活動のハイライトを発表した。同発表では、科学技術関連予算に関して、「トランプ大統領は、連邦研究開発支出を2017年度より2%増加させ、2018年度に1,512億ドルを要求することで、連邦による科学研究の重要性を明確にしており、更にこの2018年度予算要求は、 2014年度の予算要求以来最も高い比率になる。」という主張をしている。しかし、この主張は昨年の科学予算を好意的に解釈しようとする試みであり、真実とは言い難い。

実際には、2018年度予算において研究開発費は増額されていない。OSTPが用いている数字は、昨年5月に発表された昨年度予算の分析的視点のセクションに掲載されたものである。しかし、昨年度は5月まで議会が総括的調停予算(オムニバス)を承認しなかったため、同月に公表された予算の公式文書ではベースラインを仮定して算出され、結果として、大部分の機関において研究開発費が横ばいまたは微減され、2017年度の研究開発費は最低ラインの1,480億ドルとなっていた。

しかし、昨年度、議会は科学技術関連予算を増額させる総括的調停予算(オムニバス)案を通過させており、国立衛生研究所(NIH)に対する20億ドルの追加予算のほか、米国航空宇宙局(NASA)、米国海洋大気庁(NOAA)、エネルギー省(DOE)、米国地質調査所ほかの研究開発プログラムへの小幅の予算増加が生じていた。このため、事後的にみれば、更新された2017年度の科学技術関係支出の予想額は、2017年度の当初想定や2018年度提案よりもはるかに高い1,550億ドルとなる。したがって、OSTPが主張する「2%の増加」は、真実ではない。

更に注目すべきは、昨年度の研究開発経費の分配のあり方である。昨年度予算では研究開発のうち、「開発」(特に国防総省(DOD)における開発)に焦点が置かれたことが明らかである。「基礎研究」と「応用研究」は、最初から前例のない削減が予定されていた。「研究」と「開発」は異なる活動であり、「開発」への注力により、「研究」を主眼とするNIH、国立科学財団(NSF)などの機関にとって、昨年度予算は過去数十年で最も厳しいものとなった。

これらのことから、AAASは「2018年度の予算要求は、科学的探索のための資金を劇的に削減し、それほど探索的ではない他の活動への資金調達を増加させた。」と結論づけるものである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]