[本文]

国・地域名:
中国
元記事の言語:
中国語
公開機関:
中国科学報
元記事公開日:
2018/03/30
抄訳記事公開日:
2018/05/16

4年間の取り組みを経て、世界初のハンチントン舞踏病遺伝子ノックイン豚が中国で誕生

历时四年攻关-世界首例亨廷顿舞蹈病基因敲入猪在中国诞生

本文:

2018年3月30日付の「中国科学報」ネット版は、「4年間の取り組みを経て、世界初のハンチントン舞踏病遺伝子ノックイン豚が中国で誕生」と報じた。本記事ではその概要をまとめる。

3月30日、世界的権威のある学術ジャーナル「Cell」は生物学分野における重大な研究成果をオンライン発表した。広東省の科学者らが牽引した国際研究チームが4年の月日を経て初めてゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)と体細胞核移植技術を用いて世界初のハンチントン舞踏病・遺伝子のノックイン豚の育成に成功し、正確に人間の神経変性疾患(neurodegenerative disease)をシミュレーションした。同成果は曁南大学・粤港澳(広東・香港・マカオ)中枢神経再生研究院の教授である李暁江研究チーム、中国科学院広州生物医薬・健康研究院の研究員である頼良学研究チーム、アメリカ・エモリー大学(Emory University)教授である李世華研究チームなどの複数の研究チームによる共同研究により生まれた。論文の共著者は李暁江氏、頼良学氏、李世華氏であり、論文の第一共著者は曁南大学・粤港澳(広東・香港・マカオ)中枢神経再生研究院・閻森副研究員と涂著池博士、中国科学院広州生物医薬・健康研究院の劉朝明氏である。

中国科学院・裴鋼教授は、「ここ数年、中国は相次いでゲノム編集の技術によりクーロンサルの育成に関してブレクスルーを遂げた。今回、中国の科学者は豚の疾患モデル研究において大きな進展を遂げ、中国は大型動物モデル研究において世界の先頭に立ったことを示しており、更に中国の生物医薬産業のイノベーションを推進する。」と指摘した。

李暁江氏と李世華氏は2008年にアメリカ・エモリー大学と協力し、世界初の遺伝子組み換えハンチントン病モデルサルの構築に成功し、2010年に頼良学氏と協力し、初めて遺伝子組み換えハンチントン舞踏病・モデル豚を構築した。神経変性疾患の動物モデルを精確にシミュレーションするために、二つの研究チームが2013年に再度協力し、人類の突然変異のハンチントン病遺伝子をブタの内在性ハンチントン病遺伝子のsiRNA表現遺伝に導入することを試した。4年間の努力を経て、研究者がゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を利用し、人類の突然変異のハンチントン病遺伝子、即ち150CAGを含む第1エクソン(exon)の重複配列を正確にブタのハンチンチン(HTT)内在性遺伝子に導入した。ヒト線維芽細胞(fibroblast)により陽性クローン細胞のスクリーニングを行い、体細胞核の移植技術を用いてハンチントン病遺伝子ノックイン・豚モデルの育成に成功し、世界で初めて人類の神経変性疾患に似ている大型動物モデルを構築した。

頼良学氏は「中国科学報」記者のインタビューに対し、「世界初のハンチントン舞踏病遺伝子ノックイン豚モデルは、患者の神経病理変化、特に脳疾病の方面において小動物モデルより大型動物モデルの方が更に優位性を持っている。同研究成果はハンチントン舞踏病の新たな治療手段の開発に対して、安定的かつ信頼性の高い動物モデルを提供し、またその神経変性疾患大型動物モデルの育成に関する技術的手法と理論の論拠を提供した。」と表明した。

長年のハンチントン病の研究に従事し、同分野の権威のある専門家である、アメリカ・カリフォルニア大学・ロサンゼルス校(UCLA)の楊向東教授は、「ハンチントン舞踏病遺伝子ノックイン豚モデルの構築は神経変性疾患の研究分野における一里塚の発見であり、科学者に対して神経細胞死亡のメカニズムをより深く理解し、有効な治療方法を探すことが可能になる。」と述べた。

[JST北京事務所]