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- 国・地域名:
- 中国
- 元記事の言語:
- 中国語
- 公開機関:
- 中国科学報
- 元記事公開日:
- 2018/01/13
- 抄訳記事公開日:
- 2018/05/22
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中国科学院神経科学研究所、ノックインのゲノム編集技術により世界初のクーロンカニクイザル育成に成功
- 本文:
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2018年1月13日付の「中国科学報」ネット版は、「中国科学院神経科学研究所、ノックインゲノム編集技術により世界初のクーロンカニクイザル育成に成功」と報じた。本記事ではその概要をまとめる。
中国科学院神経科学研究所、脳科学・知能技術卓越革新センター、神経科学国家重点実験室の楊輝研究チームは、蘇州非人霊長類型研究室の孫強チームと協力し、 ホモロジー媒介末端結合(homology-mediated end joining, HMEJ)を基礎とするノックイン(gene knock-in)ゲノム編集技術を用いて、世界で初めてクーロンカニクイザルの育成に成功した。1月12日、同研究成果が「CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を利用し、クーロンカニクイザル育成に成功」とし、科学誌「Cell Research」電子版に発表された。
ゲノム修飾サルモデルは、人類疾病症状のシミュレーションや人類疾病メカニズムの研究と臨床治療の手段として活用されている。しかし、通常種のサルは長い繁殖周期(5-6年一世代)、数少ない新生仔(胚胎毎に一匹)かつ低効率のゲノム編集技術などの理由により、サルの標的ゲノム編集の構築がには大きな課題があった。最近の研究では、CRISPR/Cas9システムによるノックイン(gene knock-in)ゲノム編集技術を用いて、サルを育成できる。しかし、低効率等の様々な原因により、今までゲノム編集技術によりサル育成に成功したという報道はなかった。
これまでの研究に基づき、ホモロジー媒介末端結合(homology-mediated end joining, HMEJ)の方法を用いて有効的にアカゲザルの胚胎に高効率の標的ゲノム結合を実現できる。研究チームは、さらにドナープラスミド(donor plasmid)濃度及び注射分量等の受精卵の注入条件を最適化し、ノックイン(gene knock-in)の効率を高めるとともに、正常な胚胎の育成を保持し、ノックインのゲノム編集技術によりサルを育成した。
具体的に言えば、Actb (β-actin)プロモーター(Promoter)(各遺伝子の上流にあり、RNAポリメラーゼが結合し、RNAへの転写が開始される DNA上の領域)の制御下にmCherryを発現させるために、研究者はActb (β-actin)の遺伝座(gene locus)にp2A-mCherryを挿入した。完全な妊娠周期を経て、研究者は双子のサル(#1雄、#2雌)と3匹のサルの雌(#3、#4、#5)の育成に成功した。直接外皮の蛍光を通じて2匹の新生仔の足の指を観察し、野生型と比べると、#1と#5でmCherryが発現した。死亡したサルの雌(#2と#3)の各生体組織の切片を観察し、尾、足の指、心臓、筋肉、腎臓、大脳、卵巣の異なるのキメラでmCherryの発現が見つかった。
研究者は卵巣の大部分区域で発現したmCherryを測定し、ノックイン(gene knock-in)により育成したサルはジャームライン・トランスミッション(germline transmission)の可能性があることを証明した。全て組織のPCR測定結果によると、5’と3’のジャンクションの整合は正確とのこと。その他、サザンプロティング分析を行い、更に#2と#3サルの遺伝子の整合は正確で、しかも余分な遺伝子ランダムの整合はなかったことを実証した。
専門家は、「研究者はホモロジー媒介末端結合(homology-mediated end joining, HMEJ)を利用し、細胞胚胎の注射によりノックイン整合のクーロンカニクイザル育成に成功した。強固なDNAノックインの効率性と信頼性に基づき、ホモロジー媒介末端結合のノックイン戦略は、標的ゲノム修飾のサルモデル提供の可能性を示した」と表明した。
姚璇助理研究員と劉真博士研究員は、楊輝研究員が率いる霊長類疾病モデル研究チームと蘇州非人霊長類型研究室の孫強主任の指導のもと、同研究成果を完成させた。国家科学技術重大特定プログラム、中国科学院戦略性先導科学技術特定プログラム、国家ハイテク研究開発プロジェクト国家自然科学基金、中国青年千人計画、中国科学院重大突破プロジェクト、国家キー技術研究開発プロジェクト、上海市科学技術委員会プロジェクト、中国科学院百人計画等のプロジェクトの助成を受けた。
[DW編集局]+JST北京事務所