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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 米国科学振興協会(AAAS)
- 元記事公開日:
- 2018/04/13
- 抄訳記事公開日:
- 2018/05/30
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長期的な財政状況の悪化が科学とイノベーションに与える影響
Does the Long-Term Fiscal Picture Mean Trouble for Science and Innovation?
- 本文:
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4月13日付けの米国科学振興協会(AAAS)による標記記事の概要は以下のとおりである。
議会予算局(CBO)は、2028年度までの連邦財政見通しに関する最新報告書を発表した。連邦政府の総支出が、米国国内総生産(GDP)の現在の20.6%から、2028年には23.6%に増加する。この上昇の中で、純利息の支払いは、今日のGDPの1.6%から2028年には3.1%に倍増することになる。義務的経費は、主に社会保障制度、メディケア、メディケイドへの支出増によりGDPの15.2%に増加し、一方、軍事と非軍事の裁量支出は、今日のGDPの6.4%から2028年には5.4%に減少する。この裁量支出に連邦研究開発費が含まれているが、この研究開発費は裁量支出中で安定したシェアを維持する傾向があることから、裁量支出は研究開発予算の動向を示す指標となる。
軍事及び非軍事の連邦研究開発費が最近の予算実績の傾向を維持すると仮定すると、2028年度までに約110億ドル、今日の水準より8%低下する。GDPシェアとしてみると、連邦研究開発費はGDPの0.55%に低下し、スプートニク・ショック以降で最低水準となる。
しかし、これ以上にありそうなシナリオがある。議会が2020年度に予定される大規模な支出抑制を阻止し、2013年以降の一連の流れが踏襲されるというものである。このシナリオに基づくCBOの見通しでは、2020年度は裁量予算権が2.6%上昇し、その後も続くだけである。本シナリオでは、連邦研究開発予算は2020年度の大きな低下を回避し、代わりに年間平均2.5%の成長となる。これにより、 2028年度までに同予算は、再び180億ドルを上回るが、インフレがこの増加の大部分を食いつぶすこととなり、不変ドル価値では150億ドル弱となる。2028年度までに連邦研究開発費はGDPの0.61%に低下する。
これに加え、他国との競争における米国の位置づけを見ておく必要がある。米国は対GDP比の公的研究開発費で2008年には世界3位にランクされているが、データ入手可能な直近年の2015年には11位に落ちている。2005年以降のドイツの公的研究開発費の成長率に追いつくために、米国は年率5.9%の増加が必要となり、中国の公的研究開発費の成長率に追いつくには、年率6.7%の増加が必要となる。
CBOは、財政赤字が2028年度までに2兆ドルに達すると予測している。これにより、利払い費用が増加し、公的研究開発費を含む他の優先事項には予算が利用できなくなる。また、政治的に義務的経費に比して裁量支出の削減が行われる可能性が高い。赤字が続く中で、科学予算には一定の制約があり続けるだろう。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]