2018年5月3日付の「科学出版社」微信版は、「教育部による大学院生の学術学位論文16275編の抜打ち検査：不合格論文には6つの普遍的な問題が存在」と報じた。本記事ではその概要をまとめる。

研究背景：2015年、教育部は全国規模で大学院生（修士）の学術学位論文の抜打ち検査を行った。2014年度大学院生（修士）の16275編の学術学位論文を対象とし、そのうち、合格した学位論文は15989編で、全体の抜打ち検査の論文の98.24%を占め、不合格の学位論文は286編で、全体の抜打ち検査論文の1.76%を占める。

今回の大学院生（修士）の学術学位論文の抜打ち検査は以下の3つの評価方法を採用した。
一、各評価の観点に基づき項目分けを行う。
二、論文の質に対する総合評価を行う。
三、専門家は論文の質に基づき評価コメントを記載する。

そのうち、専門家による評価意見は大学院生（修士）の学術学位論文の抜き打ち検査の重要な構成部分である。直感かつ詳細な専門家による学術論文に対する総合的な判断は、豊富な情報量と重要な参考価値を有する。

今回の抜打ち検査では、大部分の省・市は主に上述の一、二の2つの方法を採用した。北京、内モンゴル、江蘇、湖北、重慶、雲南、チベット、上海のみ8つの省・市の抜き打ち検査の論文は、項目分け評価と総合評価に加え、専門家の評価意見を付けた。従って、286編の不合格の学位論文のうち、124編のみの論文は専門家の評価意見が付き、哲学（1篇）、経済学（20編）、法学（11編）、教育学（9編）、文学（13編）、歴史学（4編）、理学（5編）、工学（29編）、医学（3編）、管理学（15編）、芸術学（14編）の11の学科分類となっている。

不合格した大学院生（修士）の論文はどんな特徴を持っているか。

一、著者の科学研究能力が不足（38%）
1. 問題分析と問題解決の能力不足
①文章の内容が議題とかみ合わない。即ち、論述はよく論題に適合しない、ひいては議題を離れ、議題が偏ったという問題がある
②概念の境界がはっきりしない。論文の核心概念或いはキーワードに対する境界がはっきりしないため、論述の不明或いは研究内容の不明確を招いた
③論述が正確性に欠け、十分ではない、推理が厳密ではない
④理論性あるいは研究程度が不足
⑤研究の重点が際立たない。即ち、論述で研究の重点が際立たない、問題意識が足りない、論文観点への推敲が不足
2. 研究方法の科学性が不足
①研究方法が単一あるいは不適当
②データの真実・有効性が不足
③サンプル（カタログ）選定の科学性が不足
3. 学科の基礎知識の系統性と堅実性が不足
4. 論文の構造が正確ではない
論文構造の正確性とは、論文の各章節の間では明確した論理関係が存在し、論文構造の合理性を指す

二、論文の規範性が欠けている（22%）
1. 形式の規範性が欠けている
2. 言語の規範性が欠けている
3. 引用の規範性がかけている

三、論文の革新性と価値性が高くない（13%）
1. 論文の革新性が欠けて、以前の研究の異なった部分、革新点との区別が出来ない
2. 論文の結論では相対性と科学性が足りない、研究のあるべき価値レベルに達していない、或いは研究の結論が不確か、研究成果の価値が低い

四、文献の包括的な質が低い（8%）
1. 参考文献の数量が足りない
2. 文献の包括的な執筆レベルが低い

五、著者の学術態度と行為が不正（7%）
1. 仕事量が不足。即ち、著者は必要な時間と精力をかけておらず、論文の研究と執筆を完成するためにあわただしくおざなりに済ませた
2. 剽窃の現象が存在する。即ち、他人の研究成果或いは関連の文献資料をそのまま引用した

六、テーマ選定の意義と正確性が足りない
1. テーマ選定した意義が不足で、顕著な研究価値はない
2. 論文のテーマ選定は専攻と関係がなく、他の学科と研究の範囲に属する
3. 論文のテーマ選定の規範性が欠けて、論題の範囲が広過ぎて、或いは論述が不明で、論点の焦点があっていない、文章化されない

上記の課題に対する助言：
1. 全面的に良質な大学院生（研究生）の就学体系を構築し、教師による授業の質を業績審査に取り入れる
2. 指導教官の学生への指導を強化し、指導教官の指導レベルを指導教官任命あるいは新入生募集資格審査の重要指標とする
3. 大学院生（研究生）の学術に対する敬意を強化し、学術教育の規範性を重視する

[JST北京事務所]