[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/05/16
抄訳記事公開日:
2018/07/19

AAASと中国科学技術協会(CAST)が新しい協力関係について協議

AAAS and Chinese Science Organization Explore New Collaboration

本文:

5月16日付け米国科学振興協会(AAAS)の標記記事の概要は次のとおりである。

中国科学技術協会(CAST)とAAASの代表が、科学コミュニケーションと教育パートナーシップを通じて両機関の長期的な協力関係を構築するための方法について協議した。ワシントンDCのAAAS本部での会議にはCASTより6名が出席し、9月に北京で3日間開催予定のサイエンス・リテラシーに関する国際会議について説明した。これはCAST(中国全土でサイエンス・リテラシーを高めるために注力している学会、団体、草の根的な組織からなる非政府連合)の60周年を記念して催されるものである。

中国政府はすべての国民のサイエンス・リテラシー向上を優先事項としており、これを実現すべく、CASTは30以上の政府主導プログラムと協力し、国民を青少年、公務員、労働者、農業従事者に分け、以前の政府主導のやり方を変え、的を絞った活動を行うことで、過去10年間でサイエンス・リテラシー率を1.6%から6.2%に引き上げた。

また、中国人科学者に対する学術誌編集者の見方についても意見交換が行われた。昨年6月、中国人科学者による学術誌への投稿数は米国を上回り、EUに次ぐ数であった。この上昇傾向は今も続いている。中国人著者を含む論文が受理される割合は低いものの、その数は増えている。

AAASとCASTとの関係は、米中間で外交関係が樹立された前年の1978年にAAASの役員が中国を訪れたことに始まる。それ以来、AAASとCASTは科学者・工学者の交流を深めることに尽力してきた。

その後、2007年に両機関は初めて公式な協定を結ぶことになった。共同出版プロジェクトでは、サイエンス誌に掲載された科学研究論文が、中国で翻訳されて配信された。AAASの「プロジェクト2061」によるサイエンス・リテラシー教材は翻訳されてCASTのウェブサイトに掲載されている。2016年にこの協定は5年間延長された。

特筆すべきは、AAASのオンラインニュース・サービスであるEurekAlert!がCASTの広報職員向けにサイエンス・コミュニケーション・セミナーを提供してきたことである。AAASは科学の公正性や職業倫理についてもCASTと連携しており、科学の公正性に対する解釈の仕方や国際共同研究へ影響する可能性のある両国の文化の違いなど、両国の科学者の関心事について盛り込んだトレーニング教材をCASTに提供している。

今回のAAASとCASTの会議は米中間外交の緊張の中で開かれた。ホワイトハウスは中国製品の輸出に関税をかけ、米国の知的財産保護のため、中国の特に米国技術革新セクター関連への投資に制限を設けることを提案していた。

中国政府は最近、中国で集められたすべての科学データについて出版される前に、政府が認可したデータ・センターに引き渡すよう命じた。米国立科学財団(NSF)はこの決定を危惧している。ホワイトハウスはまたビザに対し更なる制限を設けようとしており、中国人学生や研究者の米国への渡航に制限が加えられる可能性がある。

AAASのホルトCEOは「現政権が科学コミュニティーと共に政策を評価し発展させ、米国の繁栄を向上させることを強く推奨する。明確なスパイ行為に対する措置は必要だが、曖昧な根拠に基づいた科学協力の阻止は国益を害するものである。」と述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]