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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2018/06/19
- 抄訳記事公開日:
- 2018/08/21
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合成生物学の進歩に伴う安全保障上の懸念を評価するための枠組みの作成
- 本文:
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6月19日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。
国防総省(DOD)の委託によりNASEMが取りまとめた報告書において、合成生物学は、既存の細菌やウイルスをさらに有害なものにし、その一方でそのような微生物の合成に必要な時間を短くする、というような、新たな武器開発につながる可能性を拡げていると結論している。今のところ、合成生物学による悪意のある応用事例は見受けられないが、将来の研究の進歩によりそのような事態が起きる可能性がある。
合成生物学は、疾病の治療、作物収量の向上、環境修復等の社会に役立つ様々な用途で使われているが、他方で、米国市民や軍人を脅かす可能性のある有害な用途にも利用されうる。この潜在的な悪用を適切に把握するために、NASEMはDODから合成生物学の進歩に伴う安全保障上の懸念を評価するための枠組みの開発を委託された。これには、そのような進歩が引き起こす懸念のレベルの評価とそのような脅威を予測し対処するための潜在的なオプションの提示が含まれていた。
この委託調査の中間報告で、調査委員会は、合成生物学にかかわる潜在的な懸念領域を特定して優先順位を付け、さらに生物兵器防衛アナリストによる合成生物学の現在および将来に亘っての潜在能力の検討に資する戦略的枠組みを提案した。最終報告書では、同委員会はこの枠組みを使用して、合成生物学によって引き起こされる潜在的な脆弱性を分析した。技術の入手可能性と使い易さ、効果的な武器生産における課題、攻撃に必要な専門知識と資源、そして、攻撃の影響を緩和するための事前・事後の対策に基づき、その潜在性がランク分けされた。
最終報告書では、合成生物学的により引き起こされる脅威に対しては、伝統的な生物学的・化学的防護アプローチの多くは有効であるとされるが、新たな課題もある。合成生物学に基づく兵器の予測は不可能であり、モニタリングや検出が難しいため、DODは潜在的な攻撃を適切に識別するために、公衆衛生システムの強化方法について検討すべきである。DODとそのパートナーは、引き続き広範な脅威に適用できる戦略を探求し、現在および将来においてこの分野で可能となるより幅広い能力に備えるべきである。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]