[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/06/19
抄訳記事公開日:
2018/08/21

上院はNSFの基礎研究、NASAの科学・探査の2019年度予算を大幅増額

Senate Boosts NSF Basic Research, NASA Science and Exploration

本文:

6月19日付、米国科学振興協会(AAAS)の標記記事の概要は次のとおりである。

上院歳出委員会は商務、法務、科学の2019年度予算法案を可決した。法案は現政権による基礎研究等の予算削減要求をはねのけ、主要科学機関の予算の概要は下記のようになった。

国立科学財団(NSF)
NSFは上院法案において、総額で前年比3.9%(3億100万ドル)の増加となる。5月の下院審議では全体的にもう少し寛大であった。研究関連活動は3.5%の増加。上院は「NSFの10のビッグアイデア」を支持しながらも、中核的研究を2017年レベルに設定。教育・人材育成局は1.4%の微増。STEM、ロバート・ノイス、大学院研究の各奨学金は前年度並み。研究施設建設は上院、下院ともに3隻の科学調査船(RCRV)の建設を認めた(現政権は2隻のみであった)。ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)と大型シノプティク・サーベイ望遠鏡(LSST)は上院では要求レベルの予算が付いた。これは、下院では前者には要求通り、後者には7,500万ドル上乗せされていた。また、上院は南極施設インフラ改築費の9,500万ドルを、現在のNSF極域研究プログラム室からNSFの施設費に移行して計上する。

米国航空宇宙局(NASA)
NASAは上院で前年比2.8%(5億8,700万ドル)の増加。下院は例年通り惑星科学研究に大幅な増加をしたが、成就せず。両院ともに主な探査プログラムを擁護(現政権による削減案に対し)。科学局については地球科学は微増、惑星科学は上院では「マーズ2020」と「ジュピター・エウロパ」を要求通りとした(下院は両プログラムとも大幅増加としていた)。天文物理は広視野赤外線サーベイ望遠鏡を上院では倍増(下院では前年度並み)。航空研究は5.8%の増加。主要探査プログラムである宇宙打ち上げシステム(SLS)およびオリオン宇宙船は両院ともに前年並み。両院は探査プログラムから「人間研究プログラム」を離すという現政権の要求をはねのけた。低軌道および宇宙船運行は削減するが、上院は国際宇宙ステーションの2025年以降の継続を主張。教育局は廃止を免れ、1,000万ドルの増加(下院は逆に1,000万ドルの削減を提案)。

海洋大気局(NOAA)
海洋大気研究(OAR)は前年並み(下院審議では8.2%削減)。特筆すべきはOAR気候変動研究グラント(現政権と下院は廃止を推奨)を維持するとしたこと。一方、気象および大気化学研究関連予算を前年比12.5%も削減した(下院は前年度並みを推奨)。海洋、沿岸、五大湖研究は下院推奨の増加と同じ。シーグラントプログラムは削除を免れ、継続となった。GOES気象衛星は下院と現政権の要求レベル。しかし、極域気象衛星には下院と現政権の要求に5,000万ドル上乗せした。

国立標準技術研究所(NIST)
中核的な研究プログラムは、現政権の削減や廃止の要求から免れたものもあり、全体的には前年度並みとなった。下院審議では削減となっていた米国製造業(Manufacturing USA)プログラムは前年並みとなった。また、現政権が廃止を要求していた製造拡大パートナーシップ(MEP)は、下院と同じく前年並みとなった。昨年、一時的に大幅増額となった研究施設建設は50%削減となったが、下院の62%削減要求よりは緩やかとなっている。

国勢調査局(Census Bureau)
10億ドルの増加となり、現政権の要求額と同じ。下院は2020年の国勢調査に向けて、20億ドルの増加を要求していた。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]