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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2018/07/24
- 抄訳記事公開日:
- 2018/09/14
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米国における電子イオンコライダーの開発に関する報告書
- 本文:
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2018年7月24日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。
NASEMによる新しい報告書では、「非常に大規模な粒子加速器である電子イオンコライダー(EIC)により解明される可能性のある科学上の課題は、この宇宙の眼に見える物質を形成している原子核に対する人類の理解を高める上で極めて重要である」と述べている。また、EICがもたらす進歩は、原子力科学へのインパクトにとどまらず、原子核物理学およびコライダーや加速器の技術における米国の優位性の維持のほかに、科学技術によって牽引される米国経済に対して、はるかに広範な利益をもたらす可能性がある。
同報告書は、全米アカデミーが米国エネルギー省(DOE)から要請を受け、EICの科学的重要性および国内にEIC施設を建設することによる国際面での示唆を得ることを目的に作成されたものである。
報告書によると、新しいEIC加速器施設は、米国、ヨーロッパ、アジアにおけるこれまでの電子散乱装置をはるかに超える能力を備えることになるという。報告書の作成に取り組んだ委員会は、世界中の既存および予定されている全ての加速器施設を比較して、高エネルギーおよび高輝度(luminosity、粒子の衝突が起こる割合の測定単位)を有し、また高度に分極された電子ビームおよびイオンビームを有するEICは、独特のものであり、可視物質に対する人類の理解を大きく前進させると結論づけた。
現在、ニューヨーク州ロングアイランドのブルックヘブン国立研究所(BNL)は重イオンコライダーを保有しており、バージニア州ニューポートニューズのトーマス・ジェファーソン国立加速器施設(JLab)では非常に高エネルギーの電子ビームを保有している。両研究所ともEICの設計コンセプトを提案しており、それらはすでに利用可能な自らのインフラ、専門性、および経験を使用するものである。
この報告書では、どちらか一方を高く評価することなく、既存の施設を利用することで、コスト効率の良いEICの開発を可能にし、大きな加速器施設を建設する際に伴うリスクを軽減できる。また、DOEの研究開発投資はタイムリーな方法で設計リスクを最小限に抑え、未解決の加速器の課題に取り組むために、引き続き重要であると述べている。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]