[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2018/05/02
抄訳記事公開日:
2018/12/06

欧州委員会がHorizon Europeに向けた2021~27年予算案を発表

EU BUDGET FOR THE FUTURE

本文:

欧州委員会は2018年5月2日付で標記に関する一連の発表を行っている。概要は以下のとおり。

●Horizon 2020からHorizon Europeへ

欧州委員会はEUの第9次研究・イノベーション枠組みプログラム(FP9:2021~2027年)の名称をHorizon Europeと名付ける旨発表した。欧州という集団としての強みを誇りとすることを表現している。

● 将来を見据えた研究・イノベーション予算

・EUの研究・イノベーション支援は、画期的な発見に不可欠な学問分野および各国の研究チーム間協力を促進することで、付加価値をもたらす。
・欧州委員会は次期EU長期予算(※)から1,148億ユーロ(EU27か国の総国民所得(GNI)の1.11%に相当)を割り当てることで、研究・イノベーションへの投資増を提案する。
・Horizon Europeの予算は976億ユーロで、研究・イノベーション・ファンディング・プログラムの中で過去最大である。

● Horizon Europeの3つの柱

・オープン・サイエンス
フェローシップや研究交流を通じての研究者支援のほか、欧州研究会議(ERC)および「マリー・キュリー・アクション」(Marie-Skłodowska-Curie actions.)を通じて研究者自身が策定・推進するプロジェクトへのファンディングを実施する。

・グローバルな挑戦課題
ガンとの闘い、クリーンな移動手段、プラスチック・フリーの海洋など、我々の日常的な懸案事項について高い目標を持ったEU規模のミッションを設定し、社会的課題に関連する研究を直接支援する。

・オープン・イノベーション
欧州が市場創出型イノベーションのフロントランナーになることを目指す。「欧州イノベーション会議」(European Innovation Council)が、高い潜在能力を有した画期的な技術やスケールアップの可能性を有するイノベーション企業のためのワンストップショップを提供する。

●Horizon Europe以外のEU研究・イノベーション予算

・InvestEU
InvestEUは、専用投資窓口を通じた研究開発支援のための戦略的投資に対して、ローン、保証、資本、その他の市場ベースの商品の形で、官民資金を活用したEU保証を提供する。EU予算から152億ユーロの拠出を得て、InvestEUは欧州全体で6,500億ユーロ強の追加投資を行う。

・EUの結束政策(EU Cohesion Policy)
イノベーションおよびスマート・スペシャライゼーション戦略への重点強化を通して研究・イノベーション向けEU資金の重要部分を担う。

・欧州防衛基金(European Defence Fund)
総額130億ユーロのこの新規基金は、欧州市民の保護・防衛に当たるEUの能力向上を図る。新たな脅威や今後の防衛安全保障上の脅威に対処し技術的ギャップを埋める共同プロジェクトに対して、EU資金による助成を行う。

・国際熱核融合実験炉(ITER)
ITERは、エネルギー源としての核融合の実現可能性試験を目的とした実験炉を建設・運転する世界初の長期プロジェクトである。60億ユーロが割り当てられる。

・ Euratom研究・教育プログラム
原子力発電の安全性に関する研究・教育の資金支援プログラムである。

・Digital Europeプログラム
新規Digital Europeプログラム(92億ユーロ)は、すべての欧州市民や企業にデジタル変革の利益をもたらすことを目指す。本プログラムは、高性能コンピューティング・データ、人工知能、サイバーセキュリティ、高度なデジタルスキルにおける最先端投資を促進する。

※ EU長期予算とは
複数年次財政枠組み(MFF)とも呼ばれるEU長期予算は、EUの年間予算を実施するための安定した枠組みを提供する。EUの政策的優先事項を財政的条件に合わせて数年間の計画に移し替え、EU全体の支出および主要カテゴリ/優先課題(項目)毎の支出の年間最大額(シーリング)を設定する。今回発表の次期EU長期予算は2021~2027年の期間が対象。なお過去にEU長期予算の対象となった政策課題は研究・イノベーションのみではない。

[DW編集局]